内視鏡下手術支援装置を用いた手術(ロボット手術)
 
ロボットによる精密手術

 最先端のコンピュータ技術を医学、特に外科領域に臨床応用するコンピュータ外科(Computer Aided Surgery: CAS)が発達し、外科手術にロボティクスを導入した医工学連携が進んでいます。一般に先行して使われている「ロボット手術」とは、人間である術者の手の動きを忠実にロボット鉗子が再現して行う手術であり、人間が精密手術用機器を用いて行う「精密手術」です。手術操作をするのはあくまで術者である人間です。自動化された動きや、機械のみの動作は無く、人間の制御のもとに安全性が確保されています。
"da Vinci"(Intuitive Surgical社、図)は主として胸腹部の手術を行うロボットで,da Vinciは欧米主体で全世界の中規模以上の病院に300台以上が導入され、心臓外科、泌尿器、一般外科領域を中心に既に一万例を超す手術実績があります。日本では、da Vinciは2000年に九州大学病院に導入され、消化器・総合外科(第二外科)では2001年から2002年の間に臨床治験として62例の胸腹部の手術(表)を行っており、厚生労働省から医療機器として認可されるのを待っている状態です。
九州大学病院先端医工学診療部では2003年からda Vinciを使ってのロボット手術トレーニングセミナーを行っており、医師だけでなく、工学部の技術者や企業の開発担当の方々など、全国から120名の参加を得ています。平成17年度からは中央手術室9室に設置し、臨床応用を進めていく予定です。


ロボット手術の特徴と優しさについて

 最先端の工学技術により、人間を超える「目」や「手」の開発を行い、よく見える三次元画像を見ながら、自由度の高い微細な操作も可能な鉗子を用いて、安全で確実な手術操作を行います。開腹手術の感覚に近く直感的な手術操作が可能です。
 患者様の体(皮膚)には小さな鉗子挿入用の穴を開けるのみで、従来の大きく切開する場合に比べて、侵襲が少なく、合併症も稀です。手首が曲がらない内視鏡手術用鉗子に比べてロボット手術用鉗子は手首の自由度があり、微細で精密な手術操作ができます。
 一般外科の胸腹部領域では、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌に対して主にda Vinciが使用されています。泌尿器科領域での前立腺腫瘍、腎・尿路系腫瘍、婦人科領域での子宮癌に対してもda Vinciを用いた手術が報告されています。21世紀に入って、様々な腫瘍を対象として、最新の治療機器を利用した低侵襲のロボティクス医療が展開されています。

da Vinciを用いた手術症例
(2000年7月〜2002年6月 九州大学消化器・総合外科)

食道裂孔ヘルニア修復術 * 2例
食道腫瘍切除 (癌1例、粘膜下腫瘍2例) 3例
食道筋層切開術 1例
逆流性食道炎根治術 (Nissen噴門形成術) 7例
幽門側胃切除術 2例
結腸切除術 3例
胆嚢摘出術 (胆石29例、胆嚢癌1例) ** 30例
脾臓摘出術 (胃上部血行郭清術1例を含む) 7例
鼡径ヘルニア根治術 2例
胸腺腫瘍摘出 1例
後縦隔腫瘍摘出 1例
巨大卵巣嚢腫摘出 1例
胸部交感神経切除 1例
合計 62例 (完遂60例)
* :強固な癒着で1例開腹へ ** :癒着と肝硬変のため1例開腹へ

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