祝 前原教授就任10周年
ANNUAL REPORT 2012発刊!!
 
 
 
 
毎年の当科の研究成果として発刊される英文論文集:ANNUAL REPORTには1986年発刊以来、2500編の英文論文が収載されております。
この度、前原教授就任10周年を祝うべきANNUAL REPORT 2012が発刊されるにあたり、これまでの業績の積み重ねに御尽力された第5代教授井口潔先生、第6代教授杉町圭蔵先生より御祝辞を頂きました。(英文で頂戴しましたご祝辞を、和訳して掲載させて頂いております)



前原喜彦教授在任10周年を祝う
第5代教授 井口 潔
 前原喜彦教授が在任10周年を迎えられたことは誠にご同慶の至りである。
九州大学第2外科は着々と発展して、いままさに大輪の花を咲かせようとしている。手術症例も増加し、鏡視下手術や肝移植、血管のステント手術など、先進的な外科手術の開発とともに、論文数、入局者も増加し、教室出身の他大学教授も少なくない。
研究、臨床、教育のすべてに素晴らしい展開をしているのは、前原教授の卓越した指導力の賜物であり、その評価が認められて、本年には第113回日本外科学会学術集会を会頭として日本外科学会の指導的立場として君臨されたことは誠におめでたく、こころよりお祝い申し上げる次第である。    
 英文の祝辞との依頼なので、諸外国の知己各位への情報も考慮して、当教室の歴史の歩みに照らして前原教授の功績に触れてみたい。
 九州大学医学部は東京・京都に次ぐ第3の帝国大学として1903年に創設され、初代大森治豊教授(1903-1906)、第2代中山森彦教授(1907-1917)、第3代後藤七郎教授(1919-1942)、第4代友田正信教授(1942-1962)、第5代小生、井口(1963-1985)、第6代杉町圭蔵教授(1985-2002)、第7代前原喜彦教授(2002-)であり、まさに20世紀の歩みの縮図である。
 20世紀前半の3代は西洋(ドイツ)医学輸入に向けてのわが国外科学揺籃の時代であったが、この折に「一に人格、二に学問(erstens Personlichkeit, zweitens Wissenschaft)」が教室訓として外科医養成の精神基盤としてつくりあげられたことを特筆したい。この精神は戦後の第4代友田教授に確実に継承され、第5代の私の在任中の1970年代の学園紛争の混乱期において、わが教室に毅然たる態度をとらしめ、今日の教室繁栄に安定した価値観をもたらしている事を感謝したい。前原教授は1977年の入局である。
 第4代までは外科学の研究基盤は病理組織形態学が主体となったが、第5代の私の時代には物理・化学の導入を行った。第6代に入る1985年ごろは外科手術の概念が大きく転換する時期で、古典的生物学の研究の世界になった。研究業績は外国語で書く習慣がない事を憂慮した私は日本外科学会に欧文誌を作成することに尽力し、今日のSurgery Todayの基礎をつくり、退官に際しては「MY Life in Surgical Science」と題する英文monographを遺した。この精神が第6・7代に継承され、研究業績は英文のAnnual Reportとして出されるようになった。前原教授の10周年記念論文集には100編を越える英文論文が掲載されている。
 前原教授は今回の日本外科学会のメイン・テーマを「創始と継志」として研究には歴史の流れに注目することが大切な事を指摘された。contemporary と transtemporaryの言葉を思い、また、教室百年の歴史を顧みて、芭蕉の「不易流行」の言葉を思う。
私は1981年に教室員の日常の営みのために小冊子「老婆心録」を書いた。その中に「時代が変わっても変わらないもの」と「時代に即応するもの」の意味をよく考えること、そして「小さくても、ささやかでも珠玉のごときものに育てたい」がある。前原教授の10周年にはこのような教室のひたむきな内的な結実が込められていると感じて、祝意を新たにするものである。



「輝き続ける九州大学第二外科」
九州大学名誉教授 杉町圭蔵
前原喜彦教授の教授就任10周年おめでとうございます。
大学の使命は「物事の本質を究める学問と次世代を担う若者の教育」でしょう。大学にしか出来ない学問、大学だからこそ出来る教育に力を注ぐことによって、大学は社会に貢献しているのです。医学部ではこれらの使命に加えて、「医師を養成して国民の健康を守る」という大きな社会的な責任も担っています。
九州大学医学部第二外科は、明治36年(1903年)開講以来、110年にわたり、「外科学の研究」「医学部学生や若い外科医の教育」「患者の診断・治療」という3つの面で大きな社会貢献をしてきました。とくに、この間、1300有余人の外科医を育てて社会に送り出し、「国民の健康を守る」という極めて重要な責務を果たしています。 また、研究面では、1986年以降、毎年、1年間の教室の英文研究論文集ANNUAL REPORTを発行し、新しい情報を世界に向けて発信しています。2011年までの26年間のANNUAL REPORT(図)には、丁度、2500編の英文論文が収載されております。恐らく、一つの教室でこれだけ精力的に世界に向けて多くの情報を発信している教室は、他にはないだろうと自負しており、教室員の弛まぬ努力は大きな称賛に値すると思っています。
一方、外科指導者を育てるには、本人の努力はもとより、忍耐と長い年月が掛かりますが、若者から慕われ、尊敬される立派な教授を育てることも大学の大切な仕事の一つであります。現在、九大第二外科で良き薫陶を受けた若い諸君が外科の教授として、北海道大学、群馬大学、千葉大学、慈恵会医科大学、名古屋大学、大阪大学、神戸大学、近畿大学、徳島大学、大分大学、熊本大学、九州大学、九大先端医療学、九大別府病院などで活躍していることを大変誇りに思っています。 最後になりましたが、今年、山中伸弥教授がノーベル賞を受賞されましたが、第二、第三の山中伸弥教授が日本の医学分野から出ることを願っています。
2012年12月