診療案内

前原教授 われわれ消化器・総合外科(第二外科)の担当する専門領域は、
・消化器(消化管、肝・胆・膵、脾・門脈)
・移植
・肺
・乳腺
・血管

と多岐にわたっています。

各領域の専門家が有機的な繋がりをもって、患者様の診療を行っています。
外来および入院診療において、それぞれの患者様には中心となる疾患の専門家が主治医となって診療にあたりますが、様々な問題を抱えた患者様も多くおられ、患者様に優しい医療の実践を第一に考え、各領域の専門家がみんなで相談しながら診療に取り組んでいます。
 以下に、外来診察日・担当医師および各疾患グループの診療内容について
掲載していますので、ご参照ください。また、ご相談の件などございましたら、何なりとご連絡いただければ幸いです。
教授 前原 喜彦


外来日 月・水・金
受付時間 午前8時30分〜11時
外来休診日 土・日・祝日・年末年始(12月29日〜1月3日)
電話番号 外来 (092)642-5479
病棟
(南8階)
(092)642-5473
(092)642-5476
病棟医長 伊藤 心二
外来医長 戸島 剛男


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  九州大学病院・第二外科外来診察日と担当医師


 疾患グループ
 
前原 喜彦





 









前原 喜彦





 









前原 喜彦
 消化管外科(2)

沖 英次
佐伯 浩司
安藤 幸滋
中島 雄一郎
久保 信英
中西 良太
工藤 健介

沖 英次
佐伯 浩司
安藤 幸滋
中島 雄一郎
久保 信英
中西 良太
工藤 健介
沖 英次
佐伯 浩司
安藤 幸滋
中島 雄一郎
久保 信英
中西 良太
工藤 健介
 肝臓・脾臓・門脈・
 肝臓移植外科 
吉住 朋晴
赤星 朋比古
池上 徹
副島 雄二
原田 昇
伊藤 心二
戸島 剛男
間野 洋平
本村 貴志
吉住 朋晴
赤星 朋比古
池上 徹
副島 雄二
原田 昇
伊藤 心二
戸島 剛男
間野 洋平
本村 貴志
吉住 朋晴
赤星 朋比古
池上 徹
副島 雄二
原田 昇
伊藤 心二
戸島 剛男
間野 洋平
本村 貴志
 呼吸器外科(2)
田川 哲三
豊川 剛二
平井 文彦
田川 哲三
豊川 剛二
平井 文彦
田川 哲三
豊川 剛二
平井 文彦
 血管外科
古山 正
森 浩一
井上 健太郎
古山 正
森 浩一
井上 健太郎
古山 正
森 浩一
井上 健太郎
 乳腺外科(2)
山下 奈真
茂地 智子
井上 有香
山下 奈真
茂地 智子
井上 有香
山下 奈真
茂地 智子
井上 有香



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  診療案内
 
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食道疾患について 大腸疾患について
胃疾患について スタッフ紹介へ
 
 
食道疾患
主な診療の対象は食道癌です。食道癌の治療は消化器癌のなかで最も難しく、そのため症例の蓄積による豊富な診療経験がとくに重要です。当科は、現在まで1,000例以上の食道癌手術経験を有する全国でも有数の施設で、すぐれた手術成績を世界に発信してきました。食道切除再建術は大きな侵襲を伴いますが、周術期管理の向上により安全に施行できるようになってきました。また胸腔鏡補助手術の導入により皮膚切開を小さくして低侵襲化することが可能となっています。 食道癌は他の消化器癌と異なり放射線療法、化学療法の効果が期待できます。これらを手術と組み合わせた集学的治療により治療成績の向上を図っています。近年、化学放射線療法の治療成績も向上しており、患者様の希望によっては非手術治療による根治を目指すことも可能です。 このように当科では食道癌のあらゆる病態において対応可能です。その他、難治性の逆流性食道炎やアカラジアに対する腹腔鏡下手術にも取り組んでいます。
 
胃疾患
近年、胃癌の手術術式は著しく多様化しています。腹腔鏡手術や胃内手術などの工夫で病期や全身状態によって多くの選択が可能となってきました。当科では九州大学先端医工学診療部、次世代低侵襲治療学講座との緊密な協力のもと、鏡視下手術においても充実したスタッフを揃えています。さらに内視鏡下手術支援システム(ロボット手術)による胃切除術も世界に先駆けて行っています。 進行再発例における化学療法や術後補助療法もわれわれの主要なテーマのひとつです。この分野での有望な新規抗癌剤も登場しており副作用が少なく2週間に1回程度の外来通院で可能な病態に応じた最適な治療法の開発に取り組んでいます。
 
大腸疾患
大腸手術においても腹腔鏡手術が普及してきており、大腸癌に対しては当科でも積極的に導入しています。一方、他臓器浸潤を有する進行例に対しては積極的な合併切除による根治手術を目指しています。例として、局所再発の直腸癌に対して骨盤内臓全摘術を行うことにより良好な治療結果が得られています。肝転移や肺転移例を有する進行例でも切除により長期生存が得られる場合があります。肝臓外科、呼吸器外科チームを有する当科においては一期的手術が可能です。胃癌同様、新規抗癌剤の臨床研究にも取り組んでいます。九州・沖縄の各施設と連帯しての前向き試験を行い、エビテンスのある最適な治療を提供します。
 

  食道癌疾患について
◎食道癌とは
1) 食道癌の特徴
 食道癌は高齢の男性に多い癌で、頸部よりも胸の中の食道に癌ができることが多いのです。進行すると周囲に広がっていき、気管、気管支、大動脈、心臓などの重要臓器を巻き込みます。
 また食道はリンパ流が豊富でリンパ節転移が多いのが特徴です。例えば、胸の中央にできた食道癌でも首やお腹に高頻度転移し、2/3の患者にリンパ節を認めます。
 さらに、食道癌は他の癌に比べ発育速度が早いといわれ、急速に増大します。
 そのため、癌の中でも、悪性度が高く、予後の悪い癌といわれてきました。しかし最近では、手術、放射線、抗癌剤などの治療法が改善され予後もかなり良くなってきてます。それでも、予後改善に最も重要なことは早期のうちに発見することです。

食道がんの特徴


2) 食道癌の症状
 食道は食物が通る臓器ですので通過障害により食べたときにつっかえる感じ、しみる感じがしたり、ひどくなると吐いたりします。また、周囲臓器に浸潤すると声がかすれたり、咳や血痰がでたりします。
 しかし、症状がでたときはすでに進行していることが多いのです。早期に発見するには、食道癌にかかりやすい人に、最も有用な検査を行うことが重要です。

食道がんの症状


3)早期発見のためには
 食道癌にかかりやすい人、つまりハイリスクグループとは、まず、60歳以上の男性、タバコを吸う人、お酒を多量にのむ人、喉頭癌や咽頭癌などの耳鼻科の癌にかかった人といわれています。また、食道癌や頭頸部癌の家族をもつ方です。
 私たちは、喫煙、飲酒と食道癌との関係について調べました。その結果、タバコも酒もともにのまない人を1とすると、喫煙指数が1000(例えば40本/日×25年間)以上のヘビースモーカーで、飲酒指数が100(例えば4合/日×25年間)以上の大酒飲みの方は食道癌に50倍もかかりやすいことがわかりました。
 早期発見のために最も有用な検査といえば、食道の内視鏡です。透視では、早期癌はしばしば発見しにくいものです。したがって、これらの危険因子をもつ方は、積極的に内視鏡検査を受けることをおすすめします。

喫煙、飲酒の相乗効果


◎食道癌の治療
1) 治療の原則
食道癌の治療は内視鏡による治療、手術、放射線や抗がん剤による治療にわかれます。内視鏡による治療は最近、行われるようになった治療で早期癌のみに行えます。手術は切除可能な患者、つまり、癌がとりきれる、手術に耐えられる、手術を希望する、この3つの条件をすべて満たした人のみに行われます。これらの治療ができるのは食道癌の患者のだいたい6割くらいで、残りの患者には放射線や化学療法がおこなわれます。また、手術前に癌を小さくする、また、手術で残った癌を治療するという目的で放射線や化学療法が行われることもあります。

食道がんに対する治療法


2) 食道内視鏡による治療
 内視鏡的粘膜切除術は軽い麻酔で行え、入院も数日で可能ですが、早期癌のみにしか行えません。この意味でも早期発見が重要です。私たちの施設でも内視鏡治療の可能な方には積極的に内視鏡治療を行っています。

内視鏡的粘膜切除術


3) 手術
 手術は食道を大部分切除し、食道の代わりとなる管をつくります。これを再建といいますが、通常、胃を用います。まず、右の胸をあけ、食道とリンパ節をとります、つぎに、お腹をあけ、胃を細くして、胸の中あるいは胸の前の方でつり上げ、残った食道とつなぎます。この手術は7時間から10時間くらいかかります。通常の食道癌の手術では喉頭はとらないので、術後に声は失いません。
 私たちの科ではこれまでに1000例以上の食道手術を経験しています。この経験をもとに手術方法や術後管理の改善し、安全に手術を行えるようになりました。
 手術により45% 以上の方の、根治が期待できます。術後の成績は癌の進行度(Stage)によります。特に、早期癌では、90%以上の根治が望めます。

Stage別の5年生存率


4) 放射線、化学療法
 放射線や化学療法は手術の行えない患者に行います。食道癌は胃癌や大腸癌よりもこれらの治療が効くことが多く、写真のように10cmもある癌が、きれいに消えることもあります。ただし、たいていの場合はこのようにきれいに消えても、半年から一年後にまた癌がでてくることが多く、進行食道癌の治療は原則として手術といえます。
 私たちの科では、手術前に放射線や抗癌剤で腫瘍を小さくし、安全に切除できる大きさにして手術をおこなう術前放射線・化学療法や手術後に残った癌細胞に対しておこなう術後放射線・化学療法も積極的に行っています。

放射線・化学治療の奏功例


5)私たちのめざす食道癌の治療
 食道癌の治療では癌をなおすという意味で、手術では頸部も含めた徹底的なリンパ節郭清が行われていますが、侵襲も大きくなります。したがって、早期癌に対しては内視鏡治療が行ったり、最近では小さな傷で食道を切除する胸腔鏡手術が導入しています。また、少量の抗癌剤を連日投与することに副作用を軽減し、投与量をあげ効果を期待するという方法が主流となってきました。私たちは、「癌を治す」ことと「患者にやさしい」治療、両方を目指した治療を心がけています。

根治性と低侵襲をめざして


◎食道癌切除1000例の治療成績
 当科では、1964年12月に食道癌に対する一例目の手術を行って以来、現在までに1000例以上の食道切除術を行ってきました。
1980年以降はおおむね年間20例以上の手術を行うようになり、とくに1990年頃は年間40例以上の手術を行いました。90年代後半から2000年前半には、当科で多くの食道外科医が育ち、関連病院でも食道癌の手術を行うようになっため、手術数は若干、減少しました。しかし、最近では、高齢者や放射線治療後などの非常に難しい食道癌患者の手術を積極的に行うようになったため、患者が集まり、再び、現在では年間約40例の食道切除術を行っています。
食道切除症例の推移


 食道切除術は非常に難度の高い手術で術後合併症の多い手術といわれてきました。
前期(’64-‘80)は合併症は62 %と高率に発生しました。それが、中期(’81-‘93)では38 %に、後期(’94-‘06)では33 %に減少しています。なかでも、最も問題となるのが、肺炎などの肺合併症で、前期では42 %に発生していましたが、中、後期では13, 14 %と減少しました。
時期別の合併症の頻度


 手術後の術死(手術後30日以内の死亡)、在院死(退院できずに死亡すること、癌の再発死も含む)ともに、著明に減少してきました。とくに、前期では、術死8.1 %、その他の在院死6.1 %と高頻度でしたが、最近、13年間では371例中、術死は1人も経験していません。この成績は、全国的にもトップレベルの成績といえます。
食道切除後の術死および在院死亡の推移


 過去40年間、1000例の生存曲線です。術後1年、3年、5年生存率はそれぞれ、65, 37, 30 %でした。一方、原病生存率(術後、食道癌が再発せずに生きることができた割合)は、それぞれ71, 44, 37 %でした。
食道切除後の術死および在院死亡の推移


 時期別に食道切除後の予後をみると、予後の改善が顕著に認められます。すなわち、5年生存率は前期では、14 %であったのに対し、中期では27 %、後期では46 %でした。
食道切除後の術死および在院死亡の推移


 さらに、時期別に原病生存率(再発せずに生きることができた割合)を検討すると、後期では52 %でした。食道癌の再発がほとんど5年以内に発生することを考えると、最近では手術した患者の半数以上の方で食道癌が根治できることを意味しています。
食道切除後の術死および在院死亡の推移


 40年間に、九州大学第二外科(消化器・総合外科)で経験してきた食道癌手術1000例の変遷をふりかえると、肺合併症は減少し、最近では術死を経験しなくなりました。一方、予後は確実に改善し、最近では半数以上の症例において根治が可能となっています。これには、麻酔、ICU等における周術期(術前、術後)管理の向上、診断技術の向上による早期発見・正確な進行度診断、より有効な化学・放射線療法の応用、手術の技術向上等のさまざまな要因によるものと考えられます。
 私たちは、今後も経験を積み重ね、より質の高い医療を目指していきたいと考えています。
食道切除後の術死および在院死亡の推移


◎食道良性疾患

悪性の病気ではありませんが、逆に症状が強く、治療に苦労することが あります。

1)食道アカラシア

食道の神経の障害によっておこる食道の運動機能不全が原因の良性疾患で、食事が飲み込みにくく なるなどの症状をきたします。好発年齢は20から40歳代で、やや女性に多い疾患です。

治療法は薬物療法、バルーンによる拡張術などが ありますが、狭窄の程度が強く、これらの治療で改善 しない場合には、手術が必要です。

写真左:術前、食後の嘔吐を繰り返していました。バリウムの流れが悪いのが解ります。 写真右:術後の状態です。食後のつかえが全く無くなりました。バリウムの流れが極めて スムーズです。

2)逆流性食道炎

胃酸や胆汁酸が食道に逆流することにより発症しますが、最近わが国でも食生活や生活様式の欧米化が進み、高齢化や肥満に伴う逆流性食道炎が増加してます。症状としては、夜間の胸やけ、嚥下障害などがあります。 初期の治療法は生活指導、食事指導、薬物療法などですが、内科的治療に抵抗性の場合には手術を行います。

3)食道憩室

食道壁の一部が嚢状に突出した疾患で、先天性と後天性が あります。多くは無症状ですが、嚥下障害、異物感などの症状が重い場合は外科的に治療します。

4)食道平滑筋腫

食道良性疾患のなかで最も頻度の高い疾患です。腫瘍が大きく嚥下障害などの症状がある場合、外科的治療の対象となる場合があります。

アカラシアの透視所見

術前

術後
逆流性食道炎の内視鏡所見
食道憩室の透視所見

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  胃疾患について

◎胃癌とは

 胃癌は文字通り胃にできる癌です。胃癌発生のリスク因子としてヘリコバクターピロリの感染や高食塩摂取、喫煙などがあげられます。2006年の日本における胃癌の死亡数は50,415人で、悪性新生物の中の約15.4%を占めており肺癌に次いで第2位です。死亡率は少しずつ低下してきていますが、胃癌を患う人は多く、人口10万人あたり男性は100人近く、女性は40人近くが胃癌になっています。早期診断で過半数の人は早期の状態でみつかっており、治療で治る率が高くなり、治療成績が向上しています。胃癌の初期症状として体重減少や食欲不振、おなかの不快感などがあげられますが、胃癌検診で早期発見することが重要です。

 日本における胃癌の診断や治療が世界をリードしていることは周知の事実であり、その中でもわが九州大学消化器・総合外科(第2外科)の胃グループは、これまでに3000例を超える豊富な手術症例を誇る伝統と実績のある疾患グループです。胃癌には、生物学的に特性の異なる様々なタイプがありますが、これまでの治療成果をもとに、個々の症例に合わせた最先端の治療を行っております。早期胃癌では定型的手術の他に内視鏡的治療(粘膜切除術)や腹腔鏡を用いた手術を行っています。進行癌では手術を中心に化学療法の併用治療を外来や入院にて行っており、患者さん個人に合わせた治療を心がけております。しかしこのような治療方針は、私たちが勝手に決定するわけではなく、胃癌治療ガイドラインの記載に則って患者様とそのご家族と相談しながら決定します。 胃癌ガイドライン

 最新の胃癌治療ガイドラインでは胃癌の進行度を癌の胃壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移(胃から離れた臓器への転移)の程度から、StageIa, Ib, II, IIIa, IIIb, IIIc, IV の7段階に分類しています。術前検査による進行度の診断により、治療方針が決定されます

 胃癌症例の過半数は早期の癌であり、当消化器・総合外科(第2外科)における胃癌の5年生存率は早期胃癌では96.0%、進行胃癌では43.8%です。また、進行度別の生存率はそれぞれstage Ia 98.3%、stage Ib 92.5%、stage II 69.3%、stage IIIa 49.0%、stage IIIb 24.9%、stage IV 8.4%となっています。また、再発は早期癌全体の約7.6%に、進行癌の約46.2%に起こり、肝転移(肝臓への転移)やリンパ節転移腹膜播種(腹腔内の腹膜への転移)の形で認められます。


◎胃癌の手術

 粘膜内に癌がとどまるStageIA の癌では、内視鏡(口から入れるカメラ)による治療がまず試みられます。ただし癌の種類によっては、この内視鏡治療が選択できない例外もあります。粘膜下層まで達した StageIA の癌から StageIIIC までの胃癌には一般的に手術が選択されます。手術には様々な方法があり、癌の進行度や部位によって方法が選択されます。

1.胃の手術法

1) 手術のアプローチによる分類

腹腔鏡手術: 内視鏡手術や鏡視下手術と呼ばれることもありますが、胃カメラによる治療と区別するため、腹腔鏡手術と呼ばれます。腹部にカメラと細長い鉗子を挿入する孔をあけて手術をする方法です。切除した胃を取り出すためにお腹をすこし切開する必要がありますが、最小限の傷で手術が可能です。最近では、胃を取り出す作業以外のすべての操作を腹腔鏡下で行う完全鏡視下手術が主流となってきました。回復が早く、傷が目立たないため、現在では胃癌手術の半数以上がこの完全鏡視下手術で行われます。

完全鏡視下手術による術創です。数個の小さな傷のみで手術を行っています。

開腹手術: 腹腔鏡手術に対して、通常通りお腹を切開して行う手術法です。お腹の手術を何度も行っている方や、癌が非常に進行している場合は開腹手術が行われます。
開腹手術による術創です。

2) 胃の切除範囲による分類

幽門側胃切除術  
胃の入り口側を噴門側、胃の出口側は幽門側と呼ばれます。したがって出口側の胃を切除する方法が幽門側胃切除術です。胃の手術のなかでもっとも頻度が高い方法です。腹腔鏡でも開腹でも行われます。胃が部分的にのこりますが、胃の主な機能である食物の貯留、消化作用はほとんどなくなります。そのかわり、ゆっくりよく噛んで食べることで、その作用を代用することが必要です。手術後数ヶ月もすると術前と同等の食事の量となることがほとんどです。

噴門側胃切除術  
胃の入り口側を切除する手術方法です。胃の入り口に非常に近い部位にある早期癌のみが対象になります。胃の入り口を切除すると、胃の内容物が逆流するため、手術には特別な工夫が必要です。幽門側胃切除に比べると頻度は極端に少なくなります。腹腔鏡でも開腹でも行われます。

胃全摘術  
胃をすべて切除して食道と空腸(小腸の一部)をつなぐ方法です。癌が胃の入り口に近い場合や、癌が大きい場合は胃全摘術が選択されることがあります。腹腔鏡でも開腹でも行われます。この方法では胃の機能が完全に失われるために、幽門側胃切除の場合よりさらによく噛んで食事をする事が重要となります。全摘したからと言って、障害が残るわけではないので、日常生活は通常通り行なえます。


2.胃を手術した後の経過

1) 胃癌の病期と予後

 このグラフは胃癌の進行程度をあらわすstage 別に生存率(100人中の生存者数)を示しています。stage が上がるにつれて胃癌の進行程度も進んでいます。このグラフからも早く胃癌をみつければほとんどの人が生存できることがわかります。


2) 胃癌の予後と時代推移


 手術を行った年代別の生存曲線です。60、70年代と比べると、最近の方が生存率が良くなってきています。これは、技術の向上と共に胃癌が早期に見つかるようになったためなのです。


3.胃癌の再発

 下の図は胃癌の再発率を癌の胃壁への深達度別に示しています。胃癌は最初は胃の最も内側つまり胃内腔側にある粘膜層に出現すると考えられています。進行するにつれて周囲に広がっていき、また、胃壁深くに潜っていきます。そこで、胃壁への癌の潜り具合が進行程度を示す一つの方法として用いられており、深達度という表現をしています。 再発率のグラフではこの深達度が深くなればなるほど再発率も多くなっていくのがよくわかります。

 胃癌が再発してくる場合、どのような形式があるのでしょうか。いろんな臓器に癌は出現してきますが、その臓器によって性格は異なってきます。 それに伴い、再発形式も異なります。胃癌の場合、下図のように血行性転移や腹膜播種による再発がほとんどです。

1) 血行性転移  
  血液中に癌細胞が進入し血流にのっていろいろな場所に運ばれ、そこで癌として再発してしまう転移です。肝臓や肺、骨髄などに転移します。

2) 腹膜播種  
  胃癌が進行し胃の外側の壁を破った状態で腹腔内に癌細胞がバラバラと広がってしまい、腹腔内に多数、広範囲に癌を形成してしまう再発の形式です。

 
 深達度は、上図のものと同じですので、参照してください。 深達度が深くなるに連れて腹膜播種での再発率が多くなっています 。


◎胃癌 -手術以外の治療法-

 胃癌に対して、もっとも良い治療法は手術ですが、手術以外にも化学療法、免疫療法、放射線治療など治療法がいくつかあります。このページでは、主に化学療法について説明します。

 化学療法とは、抗癌剤による治療のことを指します。現在、胃癌に対する最も有効かつ確実な治療法は手術です。しかし、手術のみでは治癒できない胃癌もあります。したがって、手術不能な進行胃癌や再発胃癌に対して、治療成績を向上するためには化学療法を中心とした集学的な治療が不可欠です。

化学療法には大きくわけて以下の2つの方法があります。

1) 術後化学療法
  血液中に癌細胞が進入し血流にのっていろいろな場所に運ばれ、そこで癌として再発してしまう転移です。肝臓や肺、骨髄などに転移します。

2) 手術不能な胃癌に対する化学療法
  血液中に癌細胞が進入し血流にのっていろいろな場所に運ばれ、そこで癌として再発してしまう転移です。肝臓や肺、骨髄などに転移します。


1.化学療法の実際

 以上のように胃癌は進行してくると再発や転移を高頻度におこしてきます。このように胃とは別の臓器や部位に再発を来した場合、癌細胞が再発した場所のみに留まっているとは考えにくく、胃癌の場合は全身に拡がっている可能性が高いと思われます。

 そこで、化学療法が必要となります。化学療法は全身への治療法です。再発や進行 胃癌にとって有効な治療法の一つとなってきます。以下に胃癌の化学療法に用いら れる4つの薬剤について簡単に説明します。

1) ティーエスワン(TS-1)
抗腫瘍効果の増強と消化管毒性の軽減を可能にした経口 5-FU 系抗癌剤です。TS-1 は胃癌に対して、抗腫瘍効果、延命効果ともに期待できる有効な薬剤と考えられ、進行再発胃癌に対する第一選択薬剤として国内で広く用いられています。単剤のみならず、併用療法に関しても様々な臨床試験が行われています。 TS-1 と他の抗癌剤の組み合わせは、作用機序や作用部位が違うものを併用することにより、抗腫瘍効果を増加させると考えられます。
2) シスプラチン
シスプラチン(CDDP)はプラチナ誘導体です。単独で用いられることはなく、TS-1 と組み合わせて使用すると、他の薬剤に比べ生存期間が延長することが日本人を対象とした臨床研究で証明されています。このため、TS-1 とシスプラチンの併用治療は胃癌の化学療法では第一に使用されます。
3) 塩酸イリノテカン(CPT-11)
CPT-11 は1995年に胃癌に対する適応を認められた薬剤で、中国産喜樹に含まれるCamptothecan(CPT)の半合成誘導体であり、胃癌・大腸癌・膵癌などに抗腫瘍効果が認められます。単剤でも使用されますが、TS-1 との併用も行われます。
4) パクリタキセル
西洋イチイの樹皮から抽出された物質で、他薬剤との交差耐性がなく、初回化学療法に用いても、他の化学療法を行った後の二次化学療法に用いても同等の抗腫瘍効果を発揮します。単独で使用されることが多い薬剤です。
5) ドセタキセル
パクリタキセルの類縁化合物で、フランスにおいて開発された薬剤で、2000年に 胃癌に対して認可されました。最近では副作用軽減の目的で週1回の投与や2週毎の投与が行われています。TS-1 との併用も行われます。
6) カペシタビン
2011年より新たに使用可能となった経口 5-FU 系抗癌剤です。癌の中に数多く存在するタンパクにより活性化されます。今後 CDDP との組み合わせや単剤で使用頻度が高まってくるものと考えられます。

この他にハーセプチンと呼ばれる薬剤が2011年から胃癌に新たに使用できるようになりました。この薬剤は癌細胞表面に数多く存在するタンパクに対する抗体です。このタンパクが多く発現している癌の場合のみ使用可能です。カペシタビンと CDDP との組み合わせの治療と一緒に用いられます。


2.臨床試験について

 当科では治療効果のある様々な最新の薬剤を用いて、副作用が少なく、最大の治療効果を上げるように努力しています。入院や外来通院での治療など、無理の無い、それぞれの患者さんに最適の治療を選択するように心がけています。

 また、当科では、複数の薬剤を組み合わせた胃癌の最新の化学療法の開発を行なっています。このような研究を臨床試験と呼びます。当科は、このような化学療法の 臨床試験を行う全国的な研究グループにも属しています。したがって、当科で治療して頂ける患者さんは、最先端の治療を受けられるとともに臨床試験への協力をお願いする場合もあります。 すべての抗癌剤による治療はこの臨床試験の結果をもとにして使用されています。

 このように消化器癌の化学療法は一見複雑で、危険なもののようにも感じますが、当科には外科手術だけでなく、がん薬物療法の専門家も多数在籍しています。化学療法については安心してお問い合わせください。

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  大腸癌について
 
◎大腸癌とは
 大腸癌は結腸と直腸にできる癌の総称で、部位により上行結腸癌、横行結腸癌、下行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌と呼ばれます。結腸癌と直腸癌は解剖学的位置の違いにより治療方針が多少異なるため分けて考えられることもあります。男女別の癌罹患率の推移のグラフに示されるように、日本人に多かった胃がんは減少傾向にあり、大腸がんが増加しています。毎年約6万人が罹患し、21世紀には胃がんを抜くとの予測もあります。大腸がんによる死亡は、男性では肺がん、肝臓がんに次いで3番目、女性では1番目に多くなると推定されています。

大腸がんの発生には、環境的因子が大きく影響しています。食事では特に動物性脂肪やタンパク質の過剰な摂取が問題となります。大腸癌にかかりやすい危険因子として、

1) 大腸ポリープと診断されたことがある、
2) 家族の中に大腸がんにかかった方がいる、
3) 潰瘍性大腸炎で長期治療している、


などがあります。大腸ファイバースコープを用いた検査では、大腸ポリープはかなりの頻度で見つかります。すべてのポリープががんの前兆とうわけではありません。しかし、ある程度の大きさのポリープが見つかった場合は大腸癌にならないように内視鏡的ポリープ切除などの適切な処置を受ける必要があります。

 大腸癌の診断・治療技術の多様化、新薬の出現に伴う治療法の進歩は著しく、臨床データに基づいた治療方針の決定(Evidence based medicine; EBM)が必要です。癌が見つかったら、即手術というわけではありません。

 まず、大腸癌であることが疑われた場合、内視鏡検査、大腸透視検査、CTスキャン検査、場合によっては MRI や PET 検査も追加されます。それらを総合的に判断し治療前の病期(ステージ)が決定されます。それから、それぞれの病期に合わせて、内視鏡的治療、腹腔鏡下手術、開腹手術、化学療法、放射線治療などが選択されます。

 大腸癌はその他の消化管癌(食道癌や胃癌)と比較すると、比較的治療しやすい癌です。肝臓に転移がある場合でも根治的な手術が可能な場合がありますし、前立腺や膀胱など他臓器に浸潤した直腸癌でも手術が可能な場合があります。また、最近になり認可された抗癌剤により、化学療法による治療成績も格段に向上しています。
当科では、大腸癌の進行度に合わせた治療、腹腔鏡手術、高度進行癌に対する手術や抗癌剤治療、癌の性質に応じた分子標的治療も積極的に行なっています。

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  大腸癌の治療
 大腸癌の治療法には内視鏡的治療、腹腔鏡下手術、開腹手術、化学療法、放射線治療などがあります。術前の詳細な検査によって癌の病期(ステージ)が下記のように予測され、適応が決定されます。
0 癌が粘膜内にとどまり、リンパ節転移がない場合
I 癌が大腸壁の筋肉までにとどまりリンパ節転移がないもの
II 癌が大腸壁の筋肉の層を超えているが、リンパ節転移がないもの
III a 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が3個までにとどまるもの
b 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が4個以上、または主リンパ節や側方リンパ節に転移があるもの
IV リンパ節転移が領域リンパ節以外におよぶか、遠隔転移があるもの


以下にそれぞれの治療の特徴を説明します

内視鏡的治療(大腸内視鏡を用いた癌治療)

 癌のリンパ節転移がないと予測されるステージ0の癌、もしくはステージIの一部の癌は内視鏡的治療が可能です。癌が粘膜下層の深い位置以下に及んでいる場合、もしくは癌の形状から内視鏡切除が不可能な場合もあります。全身麻酔が必要な手術ではないため、体への負担が少なく早期の癌にはよい適応となります。ただし、切除後の病理診断で癌が術前の予想を超えて大腸壁の深く浸潤していた場合は、根治療法のため手術が追加される場合があります。

腹腔鏡下手術

 内視鏡的治療が困難な早期の大腸癌だけでなく、最近では多くの進行大腸癌に対しても腹腔鏡下手術を行っています。開腹手術同様にリンパ節も郭清することが可能です。お腹に数カ所の穴をあけて、細長い鉗子とカメラで手術を行ない、最終的に4〜5cm 程度の切開層から癌を取り出すことになります。全身麻酔で行ないますが、創が小さいため術後の疼痛が少なく、早期退院、早期社会復帰が可能です。

開腹手術

 他臓器に浸潤した大腸癌など腹腔鏡下手術が困難な症例では開腹による標準手術が選択されます。術式には、回盲部切除術、右半結腸切除術、横行結腸手術、左半結腸手術、S状結腸手術、低位前方切除術、腹会陰式直腸切断術などがあります。癌の部位に合わせて手術法が選択され、周囲のリンパ節も一緒に切除されます。

1.進行大腸癌の治療

 肝転移がある場合や、直腸がんが前立腺や子宮などに浸潤している場合でも手術により根治が望める場合があります。 肝転移の場合、転移が片葉に限局する場合、もしくは両葉にわたる場合でも転移の個数や大きさによっては肝切除の適応となります。 直腸癌が前立腺や膀胱、女性の場合や子宮や膣に浸潤していることがありますが、当科では骨盤内臓全摘を含めた合併切除も積極的に行なっています。

 その他、当科では最新の抗癌剤や個々の患者さんの特徴に応じた分子標的薬を用いた化学療法も行ないます。大腸癌の化学療法は最近最も進歩が著しい分野です。数年前まで、手術が不能である大腸癌の予後は1年未満と考えられていたのに対して、最近では化学療法を行ない、2年以上の平均生存期間が得られるようになりました。また、臨床試験に積極的に参加することにより、さらなる治療成績の向上にも努めています。この分野は今後も益々発展すると考えられます。さらには化学療法と手術を組み合わせることにより、治療効果を最大限に高めようと考えています。


2.大腸がんの治療に使用される主な薬剤は以下の通りです。

1) フッ化ピリミジン系抗癌剤 (5-FU, UFT®.ティーエスワン®、カペシタビン®)
5-FU は古くからの大腸癌化学療法のkey drug であり、その他の薬剤はその内服薬です。
2) オキザリプラチン (エルプラット®)
白金製剤の一種。FOLFOX 療法として使用される。単独では使用されない。
3) 塩酸イリノテカン (カンプト®)
単独、もしくはFOLFIRI 療法として使用される。
  ロイコボリン (アイソボリン®、ユーゼル®)
5-FU の効果を高めるために使用する薬剤です。
4) 分子標的薬
オキザリプラチン、ティーエスワンの組み合わせ
  @ Bevacizumab(アバスチン®):VEGF を標的に開発されたヒト化抗体
  A Cetuximab(アービタックス®): マウス骨髄細胞由来のキメラ化モノクローナル抗体
  BPanitumumab(ベクティビックス®): EGFR に対するヒト抗体


3.大腸がんの治療に使用される薬剤の組み合わせ

以下の組み合わせがよく用いられます。それに分子標的薬を通常はさらに追加します。

1) FOLFOX 療法
オキザリプラチン、アイソボリン、5-FU の組み合わせ
2) FOLFIRI 療法
塩酸イリノテカン、アイソボリン、5-FU の組み合わせ
3) XELOX (CapeOX) 療法
オキザリプラチン、カペシタビンの組み合わせ
4) SOX 療法
オキザリプラチン、ティーエスワンの組み合わせ
5) IRIS 療法
塩酸イリノテカン、ティーエスワンの組み合わせ
 

4.大腸がんガイドラインによる治療の順序


 大腸がんの薬物療法は上記の組み合わせの薬剤を順序よく処方しなくてはなりません。それぞれの組み合わせにより、下痢が強かったり、皮膚症状が強かったり、アレルギー反応があったりします。現在大腸がんガイドラインでは以下のような順序を推奨しています。実際には個人の特性や症状に合わせて順序も選択します。

5.分子標的薬の効果の予測に遺伝子検査が行われています

 分子標的薬である Cetuximab と Panitumumab は Ras という、がんの発生や悪性化にかかわる遺伝子の変異により効果が少ないことがあります。このためこれら薬剤の使用は世界的に見ても Ras の遺伝子変異がない方に限られています。当科でもこれら薬剤の使用前には遺伝子検査を必ず行います。
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肝細胞癌について 膵臓癌について
胆道疾患について スタッフ紹介へ


 主に肝臓・胆道・膵臓の疾患における診断、治療方針の決定、手術を中心にした集学的治療、ならびに術後患者のフォローアップを行っています。当科における肝切除総数は1000例を越え、全国的にも極めて高い評価を頂いています。肝癌に対しては、肝切除を中心に、焼灼療法(RFA or MCT)、Lipiodolization、肝移植とそれぞれの症例の肝機能や肝癌の状態に応じてベストの治療を選択しています。肝切除に関しは、外側区域や肝S4/5/6など肝表面にある肝癌に対しては低侵襲化を目指した腹腔鏡下肝切除を導入しています。経皮的RFAが困難な場所に存在する肝癌に対しては、腹腔鏡/胸腔鏡下や開腹下に確実な焼灼を行っています。肝癌に対する肝移植は日本で2番目の症例数(128例: H22年12月まで)を誇ります。
胆道癌/膵癌に対しては、遠隔転移のない局所進行癌に対しては、根治性を高めるため動脈/門脈合併切除・再建を積極的にやっています。また、手術治療が不可能と判断した症例に対しても、新規抗癌剤治療であるGFP療法(ジェムザール+5-FU+CDDP)による化学療法や放射線療法を施行しています。GFP療法が奏功し根治手術可能となり、5年以上無再発生存中の進行胆嚢癌3症例があります。
 常に患者の立場に立った親身、最善、かつ先進の医療を目指しています。

肝癌の治療方針



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  肝細胞癌について
◎肝細胞癌はどんな癌?わが国における現況
 肝臓にできる悪性腫瘍は肝細胞から発生する肝細胞癌、胆管細胞から発生する胆管細胞癌、他の癌による転移性肝癌があります。中でも肝細胞癌が最も多く見られ、原因としてC型肝炎ウィルスによるものが多いのが特徴ですが、最近ではウィルスを認めない場合も多くなってきています。治療として、外科的切除、内科的にアルコール注入、マイクロ波凝固療法、放射線科的に肝動脈塞栓術などがありますが、外科的切除が最も良い治療成績をあげています。

わが国における臓器別癌による死亡率の割合

わが国における肝癌死の多い地域


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◎肝細胞癌は慢性肝疾患を母体に発生する
肝癌は慢性肝疾患を母地として発生する

ウイルス性肝炎やアルコール性肝障害がない人には
肝細胞癌はまず出来ません。


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◎肝切除術の進歩
 肝臓は血流の多い臓器で手術中に大量出血を来しやすい臓器の一つですが、近年の手術 手技、機器の進歩により、輸血を行わずに切除される症例が9割以上となっています。

 
超音波メスの導入
いろいろな、特殊な器具(特に超音波メス)を使うことで、肝臓の手術がより安全になりました。

◎現在
在院死率:1.9%
合併症発生率:17.5%
 
 
 

肝癌術後合併症発生率の推移

  前期 (n=162) 中期 (n=250) 後期(n=213)
合併症 102 (63%) 111 (44%)  
腹水 36 (22%) 55 (22%) 17 (8.0%)
胸水 53 (33%) 38 (15%) 8 (3.8%)
創感染 32 (20%) 16 (6.4%) 8 (3.8%)
胆汁漏 9 (5.6%) 22 (8.8%) 1 (0.5%)
腹腔内膿瘍 12 (7.4%) 16 (6.4%) 1 (0.5%)
脳症 4 (2.5%) 9 (3.6%) 0 (0.0%)
腹腔内出血 5 (3.1%) 7 (2.8%) 1 (0.5%)
消化管出血 3 (1.9%) 5 (2.0%) 1 (0.5%)
平均在院日数 35.0日 30.9日 24.1日
在院死 4 (2.5%) 11 (4.4%)  


肝切除時に輸血を要した患者の比率の変遷

グラフ

 最近では手術中および手術後に輸血をすることがほとんどなくなりました。
 肝臓は胃、小腸、大腸と違い食事が通過する臓器でないので、 術後1日目から食事が始まり多くの人は10〜14日間で退院できます。
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◎なぜ肝切除が良いのか

肝癌は大きくなるにつれて血管のなかに入りこみ、そこから腫瘍の外へと転移していきます。
左図の様に腫瘍の近くに転移巣を作っています。

3cmを越えるとほぼ半数に腫瘍の外への進展を認めます。

手術により腫瘍近くの転移巣を切除することが可能ですが、他の治療法では微小な転移巣に対しては十分な効果が得られません。


◎当科における肝細胞癌切除成績

肝細胞癌切除例の遠隔成績

グラフ01

肝細胞癌切除例の病期別遠隔成績

グラフ02

 近年の肝切除の進歩、および慎重な術後フォローによる再発の早期発見治療により、5年生存率は、Stage Iで73%、全体で55%と良好な成績をあげています。


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◎体に優しい手術
腹腔鏡補助下肝切除
 近年、腹腔鏡手術が普及し、胆嚢摘出術を中心として各施設で腹腔鏡手術が行われています。この手術の利点として、従来の開腹手術に比べ手術侵襲が少なく、術後の回復が早く、入院期間が短くなるという事が挙げられます。肝臓グループでも、部位的に可能であれば、腹腔鏡を併用して小さな切開にて肝切除を行うようにしています。

【腹腔鏡下肝切除術を施行した症例】



肝癌術後合併症発生率の推移

切除された標本です。
矢印の部に腫瘍を認めます。
従来の開腹による切除であれば臍部近くまでの切開が必要ですが、腹腔鏡補助下であれば約半分の切開で切除可能でした。


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◎腫瘍焼灼術
マイクロ波、ラジオ波による焼灼

 肝癌の場合、肝硬変を伴って肝機能の面から切除できない場合や、腫瘍が多発していて、完全に切除できない場合があります。このような場合には切除できなかった腫瘍をエコーで確認し、針を腫瘍に刺しラジオ波またはマイクロ波を流し腫瘍を焼灼してしまう方法です。ラジオ波による焼灼は、マイクロ波に比べ焼灼範囲が広く血管は焼灼しないという利点があり、焼灼療法の主流となっています。経皮的アプローチが困難な場合は、開腹/腹腔鏡/胸腔鏡などでラジオ波焼灼するなどの工夫をしています。
治療前/治療後



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◎肝細胞癌に対する肝移植

 非代償性肝硬変に肝細胞癌を合併している場合で、移植以外に根治的治療がない症例が適応となります。肝癌に対する生体肝移植症例数は日本第2位を誇ります(90例:H18年12月現在)。遠隔転移と脈管侵襲を認めないもので、肝内に径5 cm以下1個または径3 cm以下3個以内が存在する場合が保険適応となります。このミラノ基準内の癌が移植をする上では再発も少なく理想的ですが、その範囲を越える進行癌も適応になる事があります。保険適応外の移植の場合、私費での治療となり、1000万円前後かかる場合が多いですが、術後合併症の程度によって前後し、2000万円以上かかることもあります。

九州大学における生体肝移植:適応疾患



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  胆道疾患について
 
◎胆道癌
 胆管細胞癌には肝臓外にできる肝外胆管癌と肝臓内にできる肝内胆管癌があります。胆嚢癌を含めて、胆道系の癌は比較的癌が小さいときからリンパ節転移などがみられ、予後は不良です。現在のところ外科的治療以外には根治的方法はありません。局所進行胆道癌に対しては、動脈/門脈の合併切除・再建を行い根治性を高めています。


肝内胆管癌切除例の遠隔成績

グラフ01

胆管細胞癌切除例の病期別遠隔成績

グラフ02

全体の5年生存率は26%と課題の多い疾患ですが、
リンパ節転移のないStage IIIまでの症例では、5年生存率が50%を越えています。




◎胆嚢結石、胆嚢ポリープ
 胆嚢結石症は日常よく耳にする疾患で無症状のものから、胆嚢炎を生じ激烈な痛みを起こすものまで様々です。以前胆嚢結石の手術は全例おなかを開けて胆嚢を摘出していましたが。今日では、上腹部手術の既往があって癒着が強い場合等を除き殆どの症例に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。胆嚢結石以外にも良性の胆嚢ポリープにも腹腔鏡下手術を行っています。



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  膵臓癌について
◎膵臓癌
 膵臓癌の発生初期にはなにも症状がないことが多く、その診断の遅れから発見時には切除不能となっている症例も稀ではないため、予後不良な疾患です。現在、胃を温存した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を積極的に行い、術後のQuolity of Life(QOL)も向上しています。




 膵臓癌の発生初期にはなにも症状がないことが多く、その診断の遅れから発見時には切除不能となっている症例も稀ではないため、予後不良な疾患です。現在、胃を温存した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を積極的に行い、術後のQuolity of Life(QOL)も向上しています。
切除後の再建


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対象疾患 乳腺良性腫瘍に対する治療
診断 乳癌の治療を受けられる方へ
乳癌に対する治療 スタッフ紹介へ


 乳腺グループでは、乳癌をはじめ、乳腺の良性腫瘍、乳腺症、乳腺炎など、乳腺に関する疾患全般について診療を行なっています。
 乳癌は今や胃癌を抜いて女性が最も多くかかる癌となり、20〜30人に1人が乳癌になると言われています。乳癌の治療においては、手術はもちろんのこと、抗癌剤やホルモン剤、分子治療薬などによる薬物治療、放射線療法などさまざまな治療の組み合わせが重要になります。私たちは、乳癌治療の専門家として、手術法についてさまざまな技術をもち、個々の症例に応じた術式選択に細かな配慮を行なっております。さらに、薬物療法についても豊富な知識を有し、それぞれの患者さんが、納得して治療を受け入れていただけるよう努力しております。また、良性の疾患については、日帰り手術なども導入しております。
 私たちは、乳腺の病気で悩んでいる患者さんが安心して治療をうけられますよう、診療技術の向上と新しい治療法確立への研究に邁進していきたいと考えております。


  対象疾患
乳腺に関するあらゆる疾患に対応いたします。
乳腺悪性腫瘍(主に乳癌)
乳腺良性腫瘍
乳腺炎症性疾患
女性化乳房

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  診断
乳腺の病気の診断に必要な主な検査
1) 視診・触診
2) マンモグラフィ
3) 乳腺超音波
4) 細胞診
5) 生検(組織診):針生検、切開生検
6) その他の検査: CT、MRI、骨シンチグラフィーなど
病気の広がりや転移の検査に必要です。
 乳腺外科医のみでなく、放射線科医、病理医、細胞診スクリーナーなどと十分な連携をとり、迅速・確実な診断を目指しています。

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  乳癌に対する治療
 乳癌の治療は、手術、薬物治療(化学療法、ホルモン療法など)、放射線治療を適切に組み合わせて行います。
 

乳癌の治療経過

  1. 手術
     乳房にできた癌(原発巣)を切除するために行います。癌組織を含めた周りの正常乳腺組織を同時に切除しますが、切除される正常乳腺組織の範囲は乳癌の大きさ、場所、広がり、病気の進行度などにより異なります。一般的には早い時期に見つかった乳癌ほど切除される正常乳腺組織の量は少なくてすみます。また、乳癌の手術ではわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)も切除されます。転移の可能性のあるリンパ節を切除するためだけでなく、転移しているリンパ節の数から再発の可能性を予測し、術後の治療方針を決定するためにも重要です。しかし、最近では、臨床的にわきの下のリンパ節に転移がないと考えられる早期の症例に対しては、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略の試みも出てきました。第二外科では、病気の進行度、根治性、患者さんの希望を十分に考慮し、医療側、患者さんともに納得のいく治療法選択を心がけております。

    1. 乳房切除術(おっぱいをすべてとる手術)
      1. 胸筋温存乳房切除術
        乳房とわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)を切除し、大胸筋、小胸筋は残す手術です。現在では乳房切除術の中では最も一般的なものです。
      2. 胸筋合併乳房切除術
        乳房と大胸筋、小胸筋、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)、鎖骨の下のリンパ節を切除します。かつてはこの手術方法が乳癌の標準的手術として行われてきました。しかし、現在では、乳癌が胸の筋肉に著明に達しており、手術以外に治療法のない場合を除いて、この方法が行われることはほとんどありません。
    2. 乳房部分切除術(乳房温存手術)(おっぱいを残す手術)
       乳癌を含んだ乳房の一部分を切除し、同時にわきの下のリンパ節も切除します。原則として手術後に残っている乳房に放射線照射を行います。どのくらいの乳房を残すことができるかは、乳癌のできている場所や大きさにより異なります。当科では現在50〜60%の患者さんに乳房部分切除術を行っています。
    3. 腋窩リンパ節の切除
       従来乳癌の手術ではわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)全体をとること(腋窩リンパ節郭清)が標準とされてきました。腋窩リンパ節郭清は転移の可能性のあるリンパ節を切除するためだけでなく、転移しているリンパ節の数から再発の可能性を予測し、術後の治療方針を決定するためにも重要です。しかし、最近では、臨床的にわきの下のリンパ節に転移がないと考えられる早期の症例に対しては、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略の試みも出てきました。
    4. センチネルリンパ節生検
      <センチネルリンパ節とは>
      見張りリンパ節とも呼ばれ、乳房あるいは腫瘍から最初にリンパ流を受けるリンパ節であり、領域リンパ節の中で最も転移の可能性が高いリンパ節
      <センチネルリンパ節の検出法>
      ガンマ-Probe法(アイソトープを用いる方法)
      アイソトープ法によるセンチネルリンパ節同定
      色素法
      色素法によるセンチネルリンパ節生検


      <センチネルリンパ節生検の利点と問題点>
      利点
      • センチネルリンパ節生検によって、腋窩リンパ節転移の有無を正確に診断できれば、不必要な腋窩リンパ節郭清を減らし、腋窩リンパ節郭清により高頻度に発生する、浸出液がたまる、上腕が挙げにくい、上腕内側の感覚がおかしい、腕がむくみやすい、といった合併症を減らすことができる。
      • 入院日数が短縮できる。
      問題点
      • センチネルリンパ節生検の確実性や、リンパ節郭清を省略した場合の長期予後への影響が現時点では不明である。
      <センチネルリンパ節生検の適応>
      当科では以下の症例に対してセンチネルリンパ節生検を行っています。
      • 2cm以下(あるいは3cm以下で希望のある方)の乳癌で臨床的リンパ節転移陰性と考えられる症例
      • 非浸潤癌と考えられる症例
    5. 乳房再建
       やむを得ず乳房切除を受けられた患者さんに対して、乳房再建を行っています。再建の時期や方法については十分話し合っております。また、信頼のおける形成外科医への紹介も行っています。
    6. 乳癌の手術時の入院期間
       病気の進行度、手術方法により術後1日〜2週間程度の入院が必要となります。 
      乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検であれば術後1〜2日で退院可能です。乳房切除術と腋窩リンパ節郭清を行った場合には1〜2週間程度の入院が必要となります。
  2. 薬物療法
     抗癌剤、ホルモン剤、分子標的治療薬などによる薬物療法は、乳癌治療の中で非常に重要なものです。術後の再発予防、術前治療、進行乳癌、再発・転移性乳癌の治療に使われます。第二外科では抗癌剤、ホルモン剤などに詳しい、専門の医師が薬物療法を行っています。基本的に有効性の認められている標準的な治療を行っておりますが、副作用対策も徹底しており、ほとんどの患者さんが外来通院にて治療を行うことが可能です。
    1. 薬物療法の重要性
      • 乳癌と診断された時点で、半数以上の症例では、既に他臓器に癌細胞数個の固まりからなる微小転移(micrometastases)が存在することが明確になってきました。
      • 微小転移巣が、数年の経過で増殖し、レントゲン検査などで見つかるような、臨床的に明らかな形で現れてきたのが、「遠隔転移」であると考えられます。
      • 「早い時期に見つけたから手術だけで大丈夫、抗癌剤は不要」は昔の話です。「乳癌の性格によっては早期と考えられても決して手術だけで終わらせてはいけない」「きちんと抗癌剤やホルモン剤による治療をやらなくてはいけない」という考え方が最近では当たり前になってきました。
    2. 術後薬物療法
       手術直後に「微小転移を根絶」し、転移・再発を予防するために行われます。
       以下のような予後因子をもとに適切な治療法を選択します。
      • 腋窩リンパ節転移があったか、あった場合にはいくつあったのか
      • ホルモン受容体(エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR))は陽性か、陰性か
      • 病理学的に調べた癌の浸潤径はどれくらいか細胞の悪性度(グレード)はどうか
      • HER2の発現はどうか
    3. 術前化学療法
      従来術前化学療法はのような「局所進行乳癌」に対しておこなわれてきました。
      • 癌が皮膚表面に飛び出している
      • 大胸筋や肋骨など胸壁に達している
      • 腋窩リンパ節転移により上肢の浮腫がある
       すなわち『すぐには手術は無理なので、抗癌剤で少しでも小さくしてから手術をしましょう』といった場合に行われてきました。しかし最近では少し意味合いがかわってきています。
      最近の考え方
      • 全身治療を早いうちから行なう
      • 腫瘤の大きさの変化で薬剤感受性を確認できる
        約80-90%の症例で腫瘍の縮小が認められる
      • 乳房温存手術が可能になることがある
       術前化学療法では、より効果の高い治療を行うことが重要と考えられています。
    4. 転移・再発乳癌に対する薬物療法
       乳癌が転移・再発した場合には「治る」ことはまずないと考え、「慢性疾患」として、癌と共存、上手につきあっていってもらうことが重要となります。従って、転移・再発乳癌に対する薬物療法症状を和らげ、QOL(生活の質)を損なわないような緩やかな治療が基本となります。有効な薬剤は順番に使い、同時に併用することは稀です。痛み、出血、感染などで局所療法が必要な時のみ局所治療(手術、放射線治療)を行ないます。
    5. ハーセプチン
      • ハーセプチンは、HER2タンパクに対するモノクローナル抗体です。
      • 分子標的薬剤のひとつで、HER2過剰発現を有する転移性乳癌の治療薬として我が国では2000年に市販されました。
      • HER2タンパクは増殖刺激因子に対する受容体で、活性化されたタンパク質は、他のたんぱく分子を活性化させていき、その連鎖が、細胞の分裂、増殖を刺激する方向に向かわせます。
      • 15-25%の乳癌では細胞膜表面にHER2タンパクが大量に存在し、そのような乳癌では、予後が悪いことがわかっています。
      • HER2陽性「HER2タンパク過剰発現(overexpression)」、あるいは「HER2遺伝子の増幅(amplification)」の転移性乳癌症例が対象となります。HER2タンパクの過剰発現(免疫組織化学染色法)や HER2遺伝子の増幅(FISH法)を調べる検査は現在いずれも保険適応となっています。
      • 週に1回の点滴を行います。
      • 副作用:1回目の点滴で約半数の人に38℃台の発熱が認められます。また、5%に心不全がおこるとされます。脱毛や、吐気・嘔吐はありません。
      • ハーセプチン単独で効果がない場合は、パクリタキセル、ドセタキセル、ナベルビンなどと併用します。
  3. 放射線治療
     乳癌に対しては以下のような場合に放射線治療を行います。放射線治療専門の先生に十分なコンサルトを行い、適切な治療を行います。
    1. 後再発予防:乳房温存手術の場合には残存乳房に対し、原則として放射線治療を行います。乳房切除を行った場合でも、リンパ節転移が高度な場合には胸壁、鎖骨の上の部分に対し放射線治療を行うことが再発予防のために有効であることがわかってきました。
    2. 再発・転移に対する治療
    3. 転移部位における痛みの軽減

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  乳腺良性腫瘍に対する治療
 乳腺の良性腫瘍には多くの種類があります。確実な診断を行い、手術が必要か、否かをしっかりと判断します。
「良性か悪性かわからないから、手術しましょう」
「今は良性ですが、悪性になるかもしれないから手術しましょう」
といったことはほとんどありません。
どうしても手術が必要な場合や手術を強く希望される場合には、できるだけ目立たない傷で切除するようにしております。基本的には日帰り手術が可能です。

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  乳癌の治療を受けられる方へ

  1. 乳がんとは
     乳がんにかかる人の数は増加の一途をたどり、年間約3万人の方が乳がんにかかり、約1万人の方が乳がんで亡くなっています。現在日本人の30人に一人は乳がんにかかるといわれています。
     大人の女性の乳房は、乳腺が乳頭を中心に放射状に15〜20個並んでいます。乳がんはこの乳腺から発生するがんです。

    乳がんのリスク
     母親や姉妹に乳がんになった人がいる場合は乳がんのリスクが少し高くなります。乳がんの既往のある人、カロリーの高い食事、脂肪の多い食事をよくとる肥満ぎみの女性や、初潮年齢の若い人、閉経年齢の遅い人、子供の数が少ない人や子供のいない人、最初の出産年齢が遅い人もリスクが高いといわれています。


    乳がんの経過
     乳がんは早い時期に見つかれば手術や手術と放射線治療の併用により完全に治すことができます。もし、乳がんをそのまま放っておくとだんだん大きくなり、わきの下のリンパ節に転移してはれてきたり、しこりの上の皮膚や胸の筋肉にまで拡がっていきます。さらに、「がん細胞」が血液やリンパ液の流れに乗って、骨、肺、肝臓、脳など遠くの臓器に転移してしまいます。

  2. 乳がんの診断
    1. 乳がんの症状
      乳房のしこり: 乳がんの初発症状(発見のきっかけ)は、80〜90%が乳房のしこりです。乳がんは5mm〜1cmぐらいの大きさになると、注意深く触ると自分でわかるしこりになります。しかし、しこりのすべてが乳がんであるというわけではありません。乳房のしこりに気づいたら専門医にみてもらうことが大切です。
      乳房の疼痛 : 初期から痛みが出ることはあまり多くありません。
      乳頭分泌: 乳首から液体とくに血液などが出ることがあります。
      乳房のえくぼなど皮膚の変化
      わきの下のしこり、腕のむくみ
       

    2. 乳がんの検査
      1) 視触診:まず乳房を観察し、左右差、くぼみや隆起、発赤や皮膚の変化がないかを見ます。次に、乳房にしこりがないか注意深く触診し、さらに乳頭からの分泌や出血、乳頭のびらん、わきの下のしこりなどをチェックします。

      2) マンモグラフィ:乳腺専用のX線撮影装置を用い、乳房を圧迫して薄く平らにして撮影するレントゲン検査です。しこりの他に、しこりを触れないごく早期の乳がん(非浸潤癌を含む)が石灰化で発見できることもあります。しかし、マンモグラフィにはうつらないがんもありますので注意が必要です。

      3) 超音波:皮膚にゼリーを塗ってプローブをあてて内部を観察する検査です。


      4) 細胞診:しこりに細い針を刺して注射器で細胞を吸引して、細胞が悪性か良性かを顕微鏡で調べます。細胞だけではがんかどうか微妙な場合や、細胞がうまくとれない場合は、組織診が必要になります。


      5) 生検(組織診):しこりや石灰化の部分を細胞診で使うものより少し太い針で採ったり(針生検)、メスで切り取ったり(外科的生検)して、顕微鏡で組織を観察し、最終的な診断をします。


      6) その他の検査:遠隔転移があるかどうかの診断のためには、胸、骨などのレントゲン撮影、CT、超音波検査、骨シンチグラフィなどが行われます。 また、乳房の中での病気の状態をよりよく観察するためにMRIなどの行なわれます。

    3. 乳がんの進行度
      早期乳がん  0期 非浸潤がん。乳がんが発生した腺管または小葉の中にとどまっているもので、極めて早期の乳がん
      I しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節には転移していない
      II期  しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節への転移が疑われる状態、またはわきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、がんの大きさが2〜5cmである状態

      局所進行乳がん 
      III期  
      IIIA期 しこりの大きさが5cm以下で、わきの下のリンパ節に転移があり、しかもリンパ節がお互いがっちりと固まっていたり、周辺の組織に固定している状態。あるいは、わきの下のリンパ節への転移の有無にかかわらず、しこりの大きさが5cmよりも大きい
      IIIB期 しこりが肋骨や胸筋にがっちりと固定しているか、皮膚にしこりが顔を出したり皮膚が崩れたり皮膚がむくんでいるような状態
      IIIC期  しこりの状態にかかわらず、鎖骨の上または下のリンパ節に転移がある状態

      転移性乳がん IV 骨、肺、肝臓、脳など遠隔臓器に転移している場合

  3. 乳癌の初期治療
     乳癌の治療には、外科療法(手術)、放射線療法、薬物療法(抗癌剤やホルモン剤による治療など)があります。乳癌の治療は、癌の特性に基づいて、一人ひとりの患者さんに最も効果的な方法を組み合わせて行ないます。

    1. 外科療法(手術)
      1) 乳房の切除
       乳房にできたがんを切除するために行います。がんを取り残さないために、がん組織とその周りの正常組織を同時に切除します。切除される正常組織の範囲は乳がんの病期により異なります。一般的には、早い時期に見つかった乳がんほど正常組織の切除範囲は少なくて済みます。 乳がんの手術には大きく乳房を全部切除する乳房切除術と、乳房の一部分を切除し、可能な部分は残す乳房温存手術(乳房部分切除術)があります。近年、早期乳がんの発見が増加し、乳房温存手術の割合は年々大きくなっています。

      2) 腋(わき)の下のリンパ節の切除
       乳がんの切除と同時に、わきの下のリンパ節も切除されます。これは乳がんの拡がりを検査し、術後の補助療法の必要性を決めたり、再発の可能性を予測するために行うものです。

      乳房切除術
      (おっぱいを全部とる手術)
      1.胸筋温存乳房切除術
       乳房とわきの下のリンパ節を切除します。場合によっては、胸の筋肉の一部分を切除することもあります。この術式が乳房切除の中で最も一般的な乳がんの手術方法です。

      2.胸筋合併乳房切除術(ハルステッド法)
       乳房と胸の筋肉、わきの下のリンパ節を切除します。かつてはこの手術方法が標準的手術方法として実施されてきましたが、現在ではがんが胸の筋肉に著明に達している場合だけ行われます。

      3.単純乳房切除術
       がんのできた側の乳房を全部切除します。

      乳房温存手術
      (おっぱいを残す手術)

      原則として手術後、残っている乳房に放射線照射を行います。
      1.乳房円状部分切除術
       腫瘍縁から一定の距離(通常1.5cmから2cm程度)をおいて肉眼上正常と思われる乳腺組織のところを切っていく方法です。同時にわきの下のリンパ節も切除します。

      ▲正常乳腺組織を部分的にまるく切除し、
      必要に応じて腋窩リンパ節を郭清

      2. 乳房扇状部分切除術
       乳頭を中心として乳腺を扇状上に部分切除する方法です。同時にわきの下のリンパ節も切除します。

      ▲正常乳腺組織を乳頭を中心にして扇型に切除し、
      必要に応じて腋窩リンパ節を郭清

      3.腫瘍核出術乳房のしこりだけを切除する手術です。


      3) センチネルリンパ節生検
      はじめに
       乳がんの手術では、腋の下のリンパ節をとることはとても大切なことと考えられてきました。今は乳房の切除の仕方に関係なく、ごく一部の例外を除いて腋のリンパ節を切除する(腋窩リンパ節郭清)方法が一般的です。"がん"が腋のリンパ節(腋窩リンパ節)まで転移をしている方は当然それを放置して残しておくことは良いことではありません。しかし、"がん"の転移のない方にまで本当に腋窩リンパ節郭清を行うことが必要かどうかは議論の分かれるところです。腋窩リンパ節郭清をしたあとには、手術をしたほうの腕のむくみや上腕内側の感覚の低下(しびれ)、手術後の腋のリンパ液貯留、腋窩の傷の痛みなどがおこる可能性があります。どれも生命にかかわる合併症ではありませんが、術後の長い人生を考えたときには、厄介なことかもしれません。そこで、近年、センチネルリンパ節(見張りリンパ節)生検による腋窩リンパ節郭清省略の動きがでてきました。


      センチネルリンパ節生検とは
       乳房内にできた"がん"細胞が最初に流れ着くと考えられる乳房周囲のリンパ節を「センチネルリンパ節(見張りリンパ節)」(図)と呼び、このリンパ節に"がん"がいなければ、その先のリンパ節には"がん"はいないと判断をして通常の腋窩リンパ節の切除(腋窩リンパ節郭清術)はしないという方法が「センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清省略」の考え方です。

      センチネルリンパ節を見つける方法
       センチネルリンパ節を見つける方法には、「ラジオ・アイソトープ(RI)法」と「色素法」、これらの併用法があります。手術の前に「ラジオ・アイソトープ(RI)」と「色素」を乳房に注射をしてこれを目印に見つけます。通常ラジオ・アイソトープは手術前日(あるいは手術当日の朝)に、色素は手術室で麻酔のかかった後に注射をします。


      実際の手術の進め方
      1. 術中の迅速細胞診で、センチネルリンパ節に"がん"がいなかった場合
        → 予定通り、通常の腋窩リンパ節郭清術は省略する
      2. 術中の迅速細胞診でセンチネルリンパ節に"がん"がいた場合
        → 通常の腋窩リンパ節郭清術を行う
      3. 術中センチネルリンパ節がみつからない場合
        → 通常の腋窩リンパ節郭清術を行う あるいは
        → 通常より少なめにリンパ節を切除する(サンプリング)あるいは
        → リンパ節はとらない
       この方法(センチネルリンパ節(見張りリンパ節)生検による腋窩リンパ節郭清術の省略)は、通常の腋窩リンパ節郭清に伴う合併症(むくみ、痛み、しびれなど)を回避する有効な方法であることは事実です。


      センチネルリンパ節(見張りリンパ節)生検の適応
       術前診断で腋窩リンパ節転移がないと予想される方で、かつ、比較的腫瘍が小さい方(原則として2cm以下)、術前の化学療法が行われていない方にこの方法が適応と考えられます。この方法を希望される方は、ご遠慮なく担当医にお尋ねください。

      4) 乳房再建
       がんを切除する手術で失われた乳房を自分の筋肉または人工物を使用し形成する手術です。乳がんの手術と同時に行なうこともあれば、乳がんに対する初期治療終了後ある程度期間がたってから行なうこともあります。乳頭や乳輪を形成することもできます。再建術を希望される方は担当医にご相談下さい。
    2.  

    3. 術後の治療
      1) 再発予防のための治療
       乳癌は比較的早期の段階で全身的な転移、すなわち目に見えないほどの小さい細胞が全身に運ばれた状態、「微小転移」が形成されており、どんなに手術範囲を拡大してもこれらを抑制することはできません。従って、外科療法、放射線療法などの局所療法のみでは微小転移の制御は不十分であることがわかってきました。この微小転移が増殖し、数カ月から数年たって画像検査等で目に見える状態になったとき、再発(転移)と診断されます。再発を予防するためには早い時期に微小転移を根絶する治療をしておく必要があります。乳癌が再発しやすい臓器としては、しこりのあった近くのリンパ節や皮膚の他、骨、肺、肝臓、脳などが知られています。

      2)再発の危険性
       患者さん一人ひとりについて、再発するかどうかを100%確実に予測することはできませんが、今までのところ、1.わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移のある人や転移の個数の多い人、2.乳がん細胞にホルモン受容体(エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体)のない人、3.しこりの大きい人、が再発の危険性が高いことがわかっています。これらの条件をもった人については、再発予防のための治療を受けていただくのが一般的です。

      3) 再発予防のための治療法について
       乳癌の再発を予防するための治療法としては、全身すみずみまで薬が行きわたる抗癌剤やホルモン剤が、身体のどこかに隠れている細胞を退治するには最も有効と考えられています。
       術後の薬物治療は病期、年齢、閉経状況、ホルモン受容体の有無、健康状態により異なります。個々の状況に合わせた最善の治療「標準的治療」を行ないます。

      4) 乳房温存術後の残存乳房内の再発を予防する治療
       放射線療法:放射線にはがん細胞を死滅させる効果があります。乳房温存手術の場合には、残存乳房内再発を予防するため、原則として放射線療法を行ないます。
    4.  

    5. 術前化学療法について
       乳癌患者の予後を規定する微小転移を早いうちに抑えることが予後の改善につながるかもしれないという仮定のもとに、全身療法を外科治療などの局所治療に先行される術前化学療法が検討されてきました。ある程度進行した乳癌に対し術前化学療法を行なうことによって、原発巣、リンパ節転移巣の縮小が得られ、縮小手術、乳房温存手術の可能性が高まることが多くの臨床試験により報告されています。一般に3cm以上の乳がんでは乳房温存手術は難しいことが多く、このような方では術前化学療法を行なう意義は大きいと考えられます。


      術前化学療法の利点と欠点
      ◎利点:
      • 腫瘍径の大きな乳癌に対しても乳房温存手術の可能性を広げます。
         本来なら乳房切除術(おっぱいを全部取る手術)であった患者さんが術前化学療法を行う事によりしこりが縮小し乳房温存手術(おっぱいを残す手術)が可能となることが期待されます。
      • 薬剤感受性試験としての役割を果たします。
         抗癌剤の効果が、しこりの大きさの変化を見ることで具体的にわかります。効果のない場合には中止するか他の薬剤に変更します。手術をした後には、顕微鏡検査によりがん細胞に対する抗癌剤の効果がわかり、それが予後の目安になるだろうといわれています
      • 早い段階から全身の治療を行なうことになります。
      ◎欠点:
      • 効果がない場合、時間的にロスとなります。
         80-90%の高い奏効率が報告され、ほとんどの症例には効果がありますが、効果のない患者さんの場合、最初から手術が可能であれば手術をするほうが時間的ロスが少ないことがあります。ただし、逆に施行した化学療法は効果がないことがわかり術後化学療法の指針となります。化学療法を手術前に行なっても、手術後に行なっても再発率や生存率は変わりません。少なくとも術後投与に比べて成績が悪くなることはないということは認められています。
      • 腫瘍縮小が単純に乳房温存術につながらない場合があります。
         腫瘍(しこり)が同心円状に縮小すれば問題はありませんが、しばしばモザイク状や島状の腫瘍の遺残を呈して、折角、術前化学療法の効果があっても、手術を縮小できない(乳房温存手術が出来ない)こともあります。

      *術前化学療法に関心のある方は遠慮なく担当医にお尋ねください。



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肺癌について 胸腔鏡手術について
その他の疾患について スタッフ紹介へ



 呼吸器外科では、肺・縦隔などの胸部の疾患を専門的に診療を行っています。特に、近年増加している肺癌をはじめ、種々の呼吸器系悪性腫瘍について、総合的な診断、手術を中心とした治療と術後のフォローアップ、そして再発に対する治療などを行っています。癌による死亡原因で第1位となった肺癌については、その適確な早期診断と早期治療を行うことで、治療成績の向上をめざしています。浸潤性胸腺腫や胸膜中皮腫などの胸部悪性腫瘍への拡大手術+補助療法を積極的に行っております。その他、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、良性腫瘍、嚢胞性疾患・気胸、先天性疾患などの診断と治療も行っています。


  肺癌について
【概 要】
 癌による死亡者数は、わが国の疾患別死亡者数のなかで最も多く、約3分の1を占めています。そのうち肺癌は、最近急速に増加している癌で、肺癌による死亡者数は、1970年には 10,489人であったのが、2002年には5万6千人と増加し、2015年には我が国における1年間の新患者数は男性11万人、女性3万7千人になると予想されています。胃癌を抜いて第1位となり、肺癌死は全癌死亡のおよそ20%にあたります。肺癌の好発年齢は60歳台が最も多く、次に70歳台、50歳台となります。今後人口の高齢化とともに、70歳以上の肺癌が増えると考えられています。(図1、2を参照)一方、診断技術の進歩により、早期肺癌が増えており、年代の推移とともに外科切除の成績も向上しております。

【肺癌の種類】
 肺癌には大きく分けて腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、小細胞癌の4つの種類があり、そのほかにも、カルチノイド、腺様嚢胞癌、粘表皮癌などの比較的稀なものもあります。最近の特徴は、腺癌が増えていることで、日本人では、40〜45%が腺癌です。また、扁平上皮癌 35%、 小細胞癌15%、大細胞癌7-10%の頻度です。

【たばこと肺癌】
 肺癌の原因の一つとしてたばこが挙げられます。なかでも、扁平上皮癌と小細胞癌ではたばことの関係が明らかで、これらの癌患者のほとんど全ての方が重喫煙者です。一方、喫煙とは関連のない肺癌、とくに腺癌が増えつつあります。(詳しくは研究内容のページを参照下さい)

【治 療】
 肺癌に対する手術は、ごくまれな場合をのぞいて、第I期から第IIIA期までに適応されます。そのほかには放射線療法、抗癌剤による化学療法が行われます。 第2外科では、2007年3月までに1,850例と豊富な肺癌の手術経験を持っており、良好な治療成績をあげています。 とくに、近年のめざましい診断技術の向上により、比較的早期に発見される肺癌が増えてきました。また早期の肺癌症例(IA期)にはより低侵襲な手術として胸腔鏡補助下に肺癌の根治術を積極的に行っており、2007年3月までに120例の経験があります。(写真1を参照)このため、20年前に比べて良好な手術成績が得られるようになりました。(図3を参照)
 
図1:肺癌死亡者数の将来予測
 
図2:肺癌と胃癌の死亡数の年次推移
 

写真1:早期肺癌のレントゲン写真
健康診断時の胸部レントゲン写真で早期の右肺癌が見つかり、治癒手術を行いました。
図3:術後生存率
   
図4:病気別治癒切除後生存率
 
図5:治癒切除後生存率の比較
 
図6:VA期症例における切除率
 
図7:VA期症例における切除率
 
図8:各病期割合の推移
 

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  その他の疾患について
【転移性肺腫瘍】
 肺は他臓器の癌(大腸癌・直腸癌、子宮癌、骨腫瘍など)の転移しやすい場所が、肺だけに転移がとどまっている場合も多く、手術により治癒する場合もあります。
左の写真は、両肺転移を来した大腸癌患者のCT写真です。手術により3個の肺転移を摘出し、良好に経過しています。
   
【気 胸】
 突然の胸痛、咳、呼吸困難で発症することが多い疾患です。肺にできた嚢胞(ブラ)が破裂して肺より空気が漏れ起こる病気です。従来は、安静や胸腔持続吸引など内科的治療がまず行われていましたが、再発率が約30-40%あります。最近では胸腔鏡手術の普及により比較的低侵襲で安全確実に手術が行われるようになってきています。 長身のやせた20歳前後の男性に比較的多い疾患です。最近では内視鏡(胸腔鏡)手術の普及により小さな傷でも手術が可能となり、短期間の入院で行えるようになりました。
左の胸部レントゲン写真は、気胸により虚脱した(しぼんだ)左肺を示しています。
胸腔鏡下に気胸の原因となった嚢胞(ブラ)を切除しているところです。
   
【縦隔腫瘍】
 胸腺腫、奇形腫、神経原性腫瘍、先天性嚢腫などがあり、約10%が悪性といわれています。そのほとんどが手術の対象になっています。
左の写真は、胸腺腫という縦隔腫瘍で大静脈を巻き込んでいましたが、切除でき、経過良好です。
 
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  胸腔鏡手術について
従来、胸を大きく切開して行っていた呼吸器外科手術にも、胸腔鏡が導入され、疾患によっては同じ手術が小さな傷で行えるようになり、術後の痛みも軽く、入院期間も短くなりました。
健康診断時の胸部レントゲン写真で早期の右肺癌が見つかり、治癒手術を行いました。

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大動脈瘤について
最先端の治療
(カテーテールで大動脈瘤を治療・ステントグラフト挿入術など)
足や静脈がはれていませんか?(静脈・リンパ疾患) スタッフ紹介へ


  消化器・総合外科(第2外科)の血管外科グループはその歴史も古く、常に日本の血管外科の指導的立場にある伝統のある診療部門です。研究室一同、一丸となって血管外科疾患の臨床と研究に頑張っております

  大動脈瘤について
動脈瘤とは?
 
動脈の壁がもろくなって瘤状に拡張する病気です。その部位により、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤などがありますが、腹部大動脈瘤の患者さんが最も多く、当科で治療する動脈瘤症例のほとんどを占めています。動脈瘤の多くは、動脈硬化が原因といわれています。
 本来の大動脈の大きさは腹部で約1.5から2.0cmほどですが、正常径の1.5倍(3cm)以上の限局性の拡張を腹部大動脈瘤と呼びます。動脈瘤が大きくなってくると、破裂が起こる可能性が高くなります。1年あたりの破裂率は、瘤径4.0cm未満で0%、4〜5cmで0.5〜5%、5〜6cmで3〜15%、6〜7cmで10〜20%、7〜8cmで20〜40%、8cm以上で30〜50%見込まれます。いったん破裂すると、腹痛や出血性ショックが出現し、直ちに手術が行われなければ命を落とします。手術を行う前に亡くなられる患者さんが約半数、また、緊急手術を行ったとしても、出血のため心臓、脳、腎臓その他の重要臓器の血行障害を起こしているので、死亡率は高くなります。腹部大動脈破裂に対する緊急手術を行った場合、その死亡率は約50%と極めて恐ろしい病気です。
 一方、破裂する前に、心臓、肺、肝臓、腎臓などの全身状態を十分に検査して行う手術、つまり予防(待機的)手術は安全におこなわれるようになっており、その死亡率は、いろいろな施設からの成績を平均しますと一般的に約3%位です。当科では、最近20年間(1985年から2004年)に542例の腹部大動脈瘤に対する手術を施行しており、その手術死亡率は1.1%と、良好な手術成績であります。従って、破裂する前に行う待機的手術が望ましい病気であります。

症状
 ほとんどの場合が無症状で、超音波検査やCT検査で偶然発見される患者さんが多く見られます。また、多くの場合、腹部にコブのような拍動性の腫瘤が触知されることがあります。しかしながら、いったん破裂すると、腹痛や出血性ショックが出現します。また、破裂する前の前兆として、患者さんが腹痛や腰痛を自覚することもあります。

検査
 
 外来を受診して頂くと、超音波、CT等の検査をまず行います。また、狭心症・心筋梗塞など冠動脈疾患の検査も含め、全身状態の評価もできるだけ外来検査で行っております。全身状態(手術の危険度)や動脈瘤の大きさ・形状などを参考に、治療方針を決定します。血管造影など特殊な検査が必要な場合は、入院して頂いて検査を行うこともあります。

図1 【CT像と血管造影】

 大動脈瘤のCT像及び血管造影ですが、CT像にて矢印の示すように大動脈の径の拡大を認めます。また、血管造影では矢印の示すように、大動脈の突出を認めます。

治療 
 治療方法は従来の外科的手術と最先端の治療法としてステントグラフト挿入術があります。
 従来の外科的手術は、拡張した大動脈瘤を取り除き、人工血管で置換します。ほとんどの場合、開腹して手術を行いますが、開腹歴があり高度の癒着が予想される場合は、腹膜を開けないで大動脈に到達する方法(腹膜外アプローチ)を行うなどしています。前述したように極めて安全に行われており、入院期間は2〜3週間です。また図2に示しておりますが、腹部大動脈症例で手術をした症例(手術群)としていない症例(非手術群)での生存率を比較すると、手術群の生存率が有意に高い事がわかります。また非手術群の死因として瘤破裂に起因するものが多いため、待機的手術が望ましいと思われます。
 ステントグラフト挿入術につきましては、"最先端の治療"のところで詳しく説明します。

図2 【腹部大動脈瘤術後生存率】

 当科において1979年1月から1995年12月までに腹部大動脈瘤に対し手術を施行した332例の手術症例と、同時期に手術を施行しなかった44例の3年、5年生存率を比較検討したところ、図のように手術を行わなかった場合、生存率が不良で、動脈瘤手術における有効性が認められました(Komori K et al. Surgery 1999; 125: 545-52)。

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  足や静脈がはれていませんか?(静脈・リンパ疾患)
以下の静脈の病気やリンパの病気で手や足が腫れることがあります。

a) 静脈疾患
i)下肢静脈瘤:
 静脈の弁不全により静脈が怒張する(ふくれてくる)疾患です。決して命に別状はありませんが、皮膚が赤くなったり、痛みを伴ったり(静脈炎)、皮膚の色が黒くなったり(色素沈着)、皮膚炎で皮膚が痒くなったり、皮膚の欠損(潰瘍)などがみられる場合には、治療が必要となります。治療の主な方法は外科手術(ストリッピング)と硬化療法があります。

ii)深部静脈血栓症:
 静脈のなかに血の塊(血栓)ができたために、静脈が閉塞し、下肢が腫れてくる病気です。血栓が肺に飛び肺の血管をつまらせると(肺塞栓症)、突然死することもあります。内科的治療(抗凝固療法) が主ですが、外科的治療を行うこともあります。

b) リンパ浮腫
原因がわからず、特発性に腫れてくる場合や、いろいろな外科的手術後にリンパ管の流れが悪くなって、二次的に下肢、特に片側性が多いですが、腫れてくる病気です。深部静脈血栓症との鑑別が大事です。内科的な対症療法と弾力ストッキングによる保存療法が主な治療法です。


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  最先端の治療 (カテーテールで大動脈瘤を治療・ステントグラフト挿入術など)

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

 腹部大動脈瘤の治療は、外科治療が中心となります。外科治療には、前述した「人工血管置換術」か、新しい血管内治療である「ステントグラフト手術」があります。「人工血管置換術」は、現在安全に行われるようになってきましたが、動脈硬化症に起因した本疾患では、脳、心、肺、肝、腎など重篤な合併症を有する症例や高齢者において、手術リスクが非常に高くなり、低侵襲な治療法が望ましいのはいうまでもありません。「ステントグラフト手術」は、1991年、Parodiらによって最初の症例が報告されて以来、侵襲の少ない治療法として欧米を中心に急速に広まっています。日本でも、2007年4月から、市販のデバイスを使った「ステントグラフト手術」が行えるようになりました。
 当科でも、1998年5月より、自作のデバイスを使った「ステントグラフト手術」を行ってきましたが、2007年9月から市販のデバイスを使った手術を開始し、2008年11月現在、例行っています。
「ステントグラフト手術」は、足の動脈(大腿動脈)からステント付きの人工血管を大動脈の中に挿入し、レントゲン装置を用いて動脈瘤の位置に留置する術式です。足の付け根に小さな切開(5〜7cm)を入れるだけで治療ができるため、術後の痛みも少なく、患者さんの身体の負担は開腹手術に比べて極めて低いという利点があります。ご高齢の方や、ハイリスクの方にも受けやすい治療です。
 但し、全ての方にこの治療方法が適応されるわけではなく、動脈瘤の形や場所によっては、開腹手術が適している場合もあります。詳細は、当科専門医までお尋ね下さい。

図4 【ステントグラフト挿入前】

図5 【ステントグラフト挿入後】

図6 【ステントグラフトアニメーション】

閉塞性疾患に対する経皮的血管拡張術(PTA)及びステント挿入術
 骨盤の腸骨動脈領域における血管が狭窄している患者さんに対しては、手術をすることなしに、その狭窄部位に対しては、カテーテルを用いて、風船(バルーン)による拡張術と金属ステントを用い狭窄部位を拡張する治療を行っています。症例によっては、完全閉塞していても再開通可能です。
 局所麻酔で施行でき、翌日より歩行可能です。図7は、ステント挿入前とステント挿入後の血管造影写真で、ステント挿入後良好な血流が認められて、症状も消失しました。

図7 【閉塞性動脈硬化症に対するステント治療】

 ステント挿入前とステント挿入後の血管造影写真で、ステント挿入後良好な血流が認められています。

胸腔鏡下胸部交感神経節切除術
 
 胸部交感神経節切除術は上肢の慢性動脈閉塞症による指の潰瘍症例や、多汗症に対して行う手術で、以前は、約10cm位の切開を加えて手術を施行しており、術後の上肢の挙上障害などがみられる事もありました。しかし、近年、内視鏡、胸腔鏡の進歩により、皮膚を大きく切開する事無く、1−2cmの切開を3−4カ所に加えるのみで行う胸腔鏡下胸部交感神経節切除術が可能となりました。当科ではこれまでに14例の手術(2001年3月現在)を施行し良好な結果を得ています。この手術は低侵襲で、術後3−5日で退院可能です。

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はじめに 小さな孔から脾臓を取り出す!?
世界一 C型肝炎の患者さまに朗報!
出血の恐怖 バットキアリ症候群
静脈瘤を縛ろう 厚生労働省の活動
お腹を切らない手術 スタッフ紹介へ
 
当外来では、主に肝硬変症に伴う食道、胃静脈瘤を有する患者さん、脾臓が腫大し血小板減少を来している患者さん、腹水や肝性脳症などでお悩みの患者さん、さらに最近その進歩がめざましい内視鏡下外科手術の適応がある患者さんなどを対象に診療をおこなっております。
我々は、食道・胃静脈瘤に対して、いちはやく低侵襲治療である内視鏡的治療法を導入し、現在までに約2400症例と日本一の症例数を経験しています。また、低侵襲治療として爆発的な勢いで普及している内視鏡下外科手術の日本におけるパイオニア的存在であり、世界で初めての腹腔鏡による脾臓摘出術を発表し、全国でもトップの症例数を誇ると同時に、肝硬変症に伴う脾機能亢進症に対しても積極的に行っております。

  はじめに─脾門脈外科とは─
 

 肝臓病の患者さんの生存率は年々向上しています。肝臓そのものに対する治療成績の向上もさることながら、肝臓病に伴う合併症―門脈圧亢進症や、それに派生した食道静脈瘤、胃静脈瘤、脾機能亢進症―をうまくコントロールできるようになってきたことが大きな理由の一つです。一言でいえば、これらの合併症を総合的に診療するのが、われわれ脾門脈外科スタッフの仕事といえます。

 われわれは、日常の診療において外科的手技はもちろん、内科的、内視鏡的、放射線的手技を駆使しています。治療対象とする疾患も胆石症やITPなどを加え、大幅に守備範囲が拡がりました。この意味でまさに総合的な診療グループといえます。患者さんに優しい治療を目指す内視鏡外科にも精力的に取り組み、脾機能亢進症やITPに対する腹腔鏡下脾臓摘出術の症例数は全国でもトップクラスです。さらに、杉町圭蔵教授を班長とする厚生省特定疾患門脈血行異常症調査研究班には全国各地の研究者が参加し、バットキアリ症候群など門脈圧亢進症の原因となる特殊な病気を調査・研究しています。
 

(図1)北部九州は、全国でも肝疾患が最も多い地域です。このため、九州大学附属病院には、昔から肝臓病の患者さんが数多く受診されています。


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  世界一

【食道・胃静脈瘤に対する内視鏡的治療とその成績】

われわれ脾門脈外科グループは、食道・胃静脈瘤治療の我が国における草分けであり、内視鏡的治療法を施行した症例に至っては、現在まで2400例以上を数え、世界においてもトップの症例数です。(図1)
 また、肝硬変症に対する腹腔鏡下脾摘術の症例も、平成19年4月で214例と国内トップの症例数です。図で示しているように、肝硬変症における食道・胃静脈瘤の治療に対して、内視鏡治療からIVR、腹腔鏡下手術と様々な治療法を駆使し、集学的に治療しています。



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  出血の恐怖─食道・胃静脈瘤─
食道や胃の静脈瘤は門脈圧亢進症の一徴候であり、ひとたび破裂し、出血を きたすと致命的となりうる合併症です。食道静脈瘤の場合、出血する確率は10年で約60%であり(図1)、出血した場合は出血しなかった場合に比べ生存率が明らかに低下します(図2)。このため食道・胃静脈瘤に対しては予防的に治療することをおすすめします。
 
 
診断されてからの期間(年)  

出血してからの期間
(九州大学消化器・総合外科(第2外科)調べ)  

われわれはこれまでの豊富な臨床経験に基づき、手術治療、内視鏡的硬化療法(EIS)、内視鏡的結紮術(EVL)、低侵襲的血管内治療(IVR)、薬物治療といった幅広い治療オプションの中から患者個人の病態に合わせた治療を行っています。 食道・胃静脈瘤の治療 食道静脈瘤に対する我々の治療成績によれば内視鏡的硬化療法は出血例の止血率が、99%、予防的内視鏡的硬化療法後の出血を起こさない確率は95.3%と高い治療効果を誇っております。(図3) また硬化療法を施行すれば明らかに生存率は上昇します。(図4) 。

 


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  静脈瘤を縛ろう
─内視鏡的静脈瘤結紮術─
(Endoscopic variceal ligation; EVL)

食道静脈瘤の治療の一つに内視鏡的静脈瘤結紮療法があります。この方法は 内視鏡で静脈瘤を機械的に結紮するもので硬化剤などの薬剤を使用しないため安全性が高い治療とされています。ゴムバンドを用いた食道静脈瘤を結紮することにより静脈瘤壊死脱落、潰瘍を形成しその周囲に血栓性閉塞を引き起こそうとするものです。

【手技】

内視鏡を用いて静脈瘤を吸引し内視鏡先端に装着したフードの中に取り込んだ後、リングを内筒からはずすと静脈瘤は結紮される。



治療前

治療中

治療後1週間目

このように、内視鏡的静脈瘤結紮術を2−3回繰り返すと、ほとんどの症例で食道静脈瘤は消失します。


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  お腹を切らない手術

腹部のごく小さな創から腹腔鏡というカメラを挿入し、お腹の中の映像をリアルタイムで観察しながら手術をする方法です。従来の手術に比べて創が小さいため術後の回復が早く、患者さんの早い社会復帰が可能です。

腹腔鏡下手術の利点
● 術後の創痛が少ない。
● 術後の食事や歩行が早期に可能である。
● 創が目立ちにくい

当科では腹腔鏡下脾臓摘出術腹腔鏡下胆嚢摘出術腹腔鏡下ヘルニア修復術、腹腔鏡下肝切除術、腹腔鏡下胃切除術、胸腔鏡下食道切除再建術、などを行っています。


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  小さな孔から脾臓を取り出す!?

腹腔鏡下脾臓摘出術

【対象となる疾患】
 ■  特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、遺伝性球状赤血球症、
自己免疫性溶血性貧血などの血液疾患
 ■  悪性リンパ腫などの脾腫瘍
 ■  脾動脈瘤
 ■  門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症
特発性血小板減少性紫斑病
(Idiopathic Tthrombocytopenic Purpura; ITP)
ITPは、血小板自己抗体という血小板を攻撃する因子を自分がつくり出し、それにより血小板が破壊されて血小板の寿命が短くなり、ひいては血小板の数が減って血が止まりにくくなる病気です。
治療としてはまずステロイドによる内科的治療が第1選択となります。ステロイドでの治療効果が得られない場合は脾臓摘出術の適応です。
当科では腹腔鏡下脾臓摘出術を行っていますが、この治療効果は約8割もあり、きわめて効果的です。

門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症
脾機能亢進症の患者さんの脾臓は腫大しカボチャくらいの大きさになることがあります。そのため、血小板数が減少し出血しやすくなったり、そのために肝癌の治療ができなかったり、C型肝炎に対するインターフェロン治療の導入ができないこともあります。このような患者さんに対して腹腔鏡下に手術を行えば、上記のように小さな創で摘出できるのです。

脾機能亢進症の患者様の手術の場合、写真のような大きな創でないと、手術が難しいことがあります。



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  C型肝炎の患者さまに朗報!

C型慢性肝炎・肝硬変症に対するインターフェロン療法(IFN療法)は、ウイルスの駆除だけでなく肝硬変症の進展や肝細胞癌の発生の抑制において、重要な治療法です。しかし、脾機能亢進症のために血小板数や白血球数が減少している場合は、IFN療法の導入ができなかったり、途中で治療を中止せざるを得なくなることも起こります。
血液疾患の患者さまだけでなく、C型慢性肝炎・肝硬変症における脾機能亢進症に対しても、腹腔鏡下脾摘術を積極的に導入しており、H19年4月までに214例の患者さまに行っており、これは日本一の症例数です。血小板数や白血球数は、術後長期にわたり正常レベルが維持されていることがわかります。したがって、IFN療法の導入が可能となるわけです。







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  バットキアリ症候群

Budd-Chiari症候群は厚生省の特定疾患に指定されています。 病因は肝静脈、下大静脈の閉塞、狭窄(肝臓の血液の流出路が詰まった状態)により門脈圧が亢進する疾患です。本邦においては100万人に対し2.4人と比較的少ない疾患です。
自覚症状は、1)腹水、2)下腿浮腫・下肢静脈瘤、3)腹壁の血管の怒張、4)門脈圧亢進症状としての食道静脈瘤、脾腫、貧血などがあります。
予後は急性型と慢性型で大別されますが、急性型は一般に予後不良であり、腹痛、嘔吐、急速な肝腫大、腹水にて発症し1〜4週間で肝不全により死の転帰をとるといわれていますが、本邦では稀です。慢性型は約80%を占め、多くの場合は無症状に発症し、次第に下腿浮腫、腹水、腹壁皮下静脈怒張を認めます。
治療は当科では静脈の閉塞、狭窄に対して血管造影での拡張術、肝移植などを行っています。また、食道・胃静脈瘤に対しては内視鏡的硬化療法などを行っています。
また、当科では厚生労働省特定疾患門脈血行異常症調査研究班の仕事もあわせておこなっており、バッドキアリ症候群の患者家族の立ち上げも準備しているところです。



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  厚生労働省の活動

厚生労働省特定疾患門脈血行異常症調査研究班

厚生労働省特定疾患門脈血行異常症調査研究班は、特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、バッドキアリ症候群の3疾患に対し、その実態の把握や、予後の向上のために診断と治療を確立することを目的として昭和59年に発足ました。平成8年度より当科の杉町圭蔵前教授を班長とし、班員の再構成がなされ、病理学的、疫学的、免疫学的、分子生物学的検討、遺伝子異常解析を行っています。更に、重症度基準の作成、診断・治療指針の改訂も併せて行いました。
また、本研究班による努力が実を結び平成11年度よりバッドキアリ症候群が厚生労働省の治療対象疾患に採択され、患者さまに朗報をもたらしました。
難病に対する様々な最新の情報を伝達し、患者及びその家族の療養生活 を支援することを目的とした公開シンポジウム『患者家族を交えた勉強会』を、 難病患者及びその家族や、医療、保険従事者を対象として開催するなど、様々な活動を行っています。現在は前原教授が斑員となり、門脈血行異常症の病態の改明および更なる治療の進歩のために、努力しているところです。


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はじめに ―肝移植とは― 生体肝移植の手術術式
日本での肝移植・治療成績 ドナーについて
九州大学の肝移植実施体制/移植までの手続き 肝移植の費用
九州大学での肝臓移植の適応疾患 スタッフ紹介へ



移植外来は現在、生体及び脳死肝移植を希望されている患者さん、生体肝移植を受けられた患者さん、ドナーとして肝臓の一部を提供された方、および海外で肝臓移植を受けた術後の患者さんのフォローアップを行っております。消化器・総合外科(第二外科)では平成8年10月より平成24年3月までに422症例の生体肝移植、3例の脳死肝移植を行いました。 現在、年間30例以上の生体肝移植をコンスタントに施術しており、その手術・術後管理には極めて習熟した専門スタッフがあたっています。
  はじめに ―肝移植とは―
 肝移植は他に救命できる治療法のない末期の肝不全患者に対する究極の治療法です。欧米では1963年に米国のスターツルが初めての肝移植を行いました。最近の移植数は飛躍的に延び、末期肝不全患者の一般的治療として確立されています。ちなみに、2004年の1年間に全米で肝移植を受けられた患者さんは6,169人でした。肝移植の手術手技向上、シクロスポリン、FK506という免疫抑制剤の開発により、米国での治療成績は1年生存率85%、5年生存率72%と報告されています。
肝移植には方法として以下の種類があります。


生体部分肝移植

 近親者の自発的好意により、肝臓の一部をレシピエントに移植します。ドナーとなる方の健康に支障のない量を使用します。脳死ドナーの絶対数が少ない日本をはじめとする東アジアを中心に行われています。欧米でも移植待機中の患者の10%が死亡するという深刻なドナー不足のため近年増加傾向にあります。しかし 健常者にメスを入れるという倫理的な問題が言われています。



血液型不適合肝移植

 従来、血液型不適合肝移植(輸血ができない血液型の組み合わせ)は、特に成人間肝移植の場合、非常に成績が不良であるといわれていました。しかしながら九州大学では、血漿交換(2012年4月より保険適応)とリツキシマブを中心とした方法で血液型不適合成人間生体肝移植を行い良好な成績をおさめています。この方法は、門脈注入療法を使用する他大学の方法とは大きく異なるものです。術前処置に約1ヶ月必要なため、ドナーおよびレシピエント評価を含めると、肝移植の3ヶ月程前には受診頂く必要があります。





脳死全肝移植

 脳死患者(臓器提供者=ドナー)から提供された肝臓をそのまま一人のレシピエント(臓器をもらう患者)に移植します。



脳死部分(分割)肝移植

 脳死ドナーからの肝臓をサイズを縮小して移植したり 、2つに分割して2人のレシピエントに移植します。特に後者の分割肝移植は ドナー不足の深刻な現状に役立ちます。しかし、全肝移植に比べると解剖学的制約や術後の合併症が高くなると言われており、完全な臨床応用には至っていません。

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  日本での肝移植・治療成績

 日本では平成9年10月に「臓器の移植に関する法律」が成立し、脳死が人の死として法的に認められ、脳死肝移植の道は開けました。しかしながら、脳死者からの肝臓提供は少なく、我が国では2005年6月までに28例が施術されたにすぎません。このため、生体部分肝移植が主に施行されています。日本肝移植研究会(リンクhttp://jlts.umin.ac.jp/)の報告によると、2003年12月の時点で、日本での生体部分肝移植総数は2,667例、1年生存率約81.1%と良好な成績を納めています。 しかしながら、肝臓移植の必要な患者さんは年間に2,000人以上といわれ、その内のほとんどの方が移植を受けられずになくなっていると考えられます(リンクhttp://jlts.umin.ac.jp/Regisrty(2004).pdf)。

<図> 九州大学での生存率


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  九州大学の肝移植実施体制/移植までの手続き

 肝移植において中心的役割を果たすのは、直接移植にたずさわる外科医、麻酔を担当する麻酔医、肝臓、内科医、各診療科の医師、および看護師、技師などを含む移植チームです。このチームが優れた技術と豊かな経験を持っていることが移植を成功させるためには必須です。九州大学ではこれまでに外科医だけでなく麻酔医、看護師、病理医が数多く米国の移植施設で研修を進める一方で、実験研究を重ね肝移植に対し十分な準備を行なってきました。また、九州大学では、肝臓移植小委員会を設置し、肝臓病、感染症、小児科、外科、小児外科、麻酔、免疫、放射線診断の専門医、計11名が肝移植候補者、術後患者1人ひとりをチェックし、倫理的、医学的に正しく肝移植を施行できる様努力しています。以上の様な体制の下、九州大学では平成8年10月より平成17年7月までに191人の患者さんに生体部分肝移植を行っています。

 また当院は、平成12年5月に脳死肝移植認定施設に選定されました。脳死者から提供された肝臓は、日本臓器ネットワークを介して全国14施設で登録された患者さんに移植されます。

<図> 脳死肝移植認定施設(14施設)

 平成15年10月7日、九州大学消化器・総合外科(第2外科)において、全国で21例目、九州では初めての脳死肝移植を施行しました。患者さんは合併症もなく、術後29日目に退院され、現在元気に生活されています。

 次に、実際の九州大学においての移植までの流れを示します(下図参照)。
肝移植をご希望の方は、予約の上、九州大学の第二外科外来(月・水・金)を受診して下さい。その際、かかりつけの病院がある場合は、出来るだけ主治医を通して受診して下さい。外来初診時に移植全般についての大まかな説明がなされます。その後、移植を希望される患者さんは、内科又は外科に入院して頂き、移植適応の判断に必要ないくつかの検査を行うことになります。外来受診時に、御家族内でドナー候補が決まっている場合は、ご一緒に受診されることをお勧めします。ドナー候補の方は、外来で血液検査・心電図や肺機能、レントゲンなどの一般検査の後、CT(肝臓の大きさや血管の解剖をみるため)を行います(下図)。

 入院検査終了後は、肝移植手術の適応と、保険適応の有無に関して、前述の肝移植小委員会(適応委員会(月1回開催))で審議されます。ここでは、ドナーが肝臓提供に適しているかどうかも判定されます。委員会で適応ありと判断されますと、実際に手術の日程調整に入ります。
手術前には、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)を行い、十分に肝移植に対して理解・納得した頂いた上で、手術を受ける事になります。

流れ図

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  九州大学での肝臓移植の適応疾患

 肝臓の機能が十分でないために生命を脅かされている人で、移植以外の治療法が ない場合、肝臓移植を受けることができると考えて良いでしょう。既存の薬などによる治療と移植を比較し、どちらがその人の人生に有利か考慮し決定します。また適応疾患であっても肝臓以外に致命的な病気(感染症、悪性腫瘍など)や、肝移植に耐えられない高度な全身疾患(心不全など)があった場合、残念ながら肝移植が受けられないときもあります。



【レシピエントの適応基準(脳死/生体)(九州大学基準)】
以下の条件をすべて満足する患者を肝臓移植の適応とする

  1. 不可逆的、進行性、かつ致死的な肝疾患を有する
    (但し、遺伝性代謝性疾患については、個々の病態を考慮する)
  2. 肝臓移植以外に有効な治療法が現存しない。ただし、肝移植後の長期予後が他の治療法より明らかに上回ると予想される場合には、個々の症例につき検討し適応を判断する。
  3. 肝臓移植の除外条件がない
  4. 患者(小児の場合はその親権者)、提供者およびその家族が自ら希望している。
    (肝性脳症による意識障害がある場合は、家族の総意によるものとする)
(除外条件)
  1. 肝臓以外の悪性腫瘍
  2. 胆道系以外の活動性感染症(SBPを除く)
  3. 肝臓以外の主要臓器の高度に進行した不可逆的障害
    (肝腎症候群及び肝肺症候群を除く)
  4. 精神病など術後療養に際し理解・協力が望めない場合
  5. アルコールを含む薬物依存症
    (ただし、アルコールの場合、最低6ヶ月以上の禁酒期間があれば除外しない)

肝移植適応疾患の具体例をあげますと以下の様な疾患があります。


生体肝移植成功の秘訣

1. 重症化する前に生体肝移植を行う
 生体肝移植前の状態(徒歩にて外来受診できる状態、入院したまま退院できない状態)で術後生存率が大きく異なります。生体肝移植術は平均手術時間12時間、平均出血量5Lと非常に侵襲の大きい手術であり、術後は大量の免疫抑制剤が投与されます。移植後生存の獲得には、重症化する一歩手前で肝移植を行うことが最も重要です。また、重症化してしまってからではドナーは若い方に限られ、かつ右葉(全肝の2/3)の採取が必要となります。


2. 体重コントロールを徹底する
 肥満やアルコールによる脂肪肝の方は肝臓を提供することができません。移植肝および残肝機能不全のリスクが高いからです。一方肥満レシピエントは、大きい移植肝を提供できるドナーが希有であると共に、術後敗血症等の致死的合併症の頻度も極めて高くなります。生体肝移植前は、ドナー、レシピエント共に体重のコントロールが非常に重要です。



肝硬変症

 肝炎ウイルス(B型肝炎、C型肝炎など)やアルコール、後に述べます先天性代謝異常などの種々の原因によって繰り返し肝炎がおこり、終末期には肝組織の減少と線維成分が増生することにより肝臓が硬くなってしまいます。その結果生きていく上で必要な物質の代謝能力や解毒能力・合成能力が落ち腹水がたまったり、血が止まりにくくなったり、黄疸、入眠障害、高次中枢機能の低下等の症状が出現します。また、胃腸の静脈から形成される門脈(栄養分を含んだ肝臓への流入血管)の血流が障害されるため門脈圧亢進症となり食道静脈瘤が出現し、突然、吐血したりします。


肝細胞癌

 肝細胞癌は通常肝硬変を背景に発生します。比較的膨張性に発育し他の臓器への転移(腫瘍が原発巣を離れて血流、リンパ流、あるいは直達的に原発巣を離れて増殖すること)が他の原発性胆管癌などと比べて少ないため、移植の適応となります。 最近、急激に症例数が増えています。ミラノ基準(3cmまでの大きさなら3ヶ以内、5cmまでの大きさなら1ヶのみ)という基準内の癌が移植をする上では再発も少なく理想的ですが、その範囲を超える進行癌も適応になることがあります。

肝細胞癌



劇症肝炎、亜急性肝不全

 原因としてウイルス、薬剤などによって急激な肝不全(肝機能不全)を起こすものです。肝機能の急激な悪化と意識障害が特徴で、一刻も早い肝移植が必要になります。



原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎

 原発性胆汁性肝硬変は、慢性的な胆管の炎症の結果、胆汁性肝硬変になります。中年女性に多く、最初はほとんど症状がありませんが、次第に全身倦怠感・かゆみ・黄疸などの症状が出てきます。次第に肝硬変に移行し、移植の適応となります。
原発性硬化性胆管炎は、胆道の繊維化によって胆管の狭窄が起こり、胆汁の流れが悪くなり胆汁性肝硬変になっていきます。若い男性に多く、他の胆道再建術、薬剤治療が無効な場合、肝移植の適応となります。炎症性腸疾患、胆管癌の合併に注意しなくてはいけません。



胆道閉鎖症

 生まれつき胆汁の排泄路である胆道の一部が欠損しているため新生児黄疸の遷延、増強する疾患です。早期に胆道を腸へ開通させる手術(胆道再建手術)をしないと胆汁性肝硬変となります。手術を行っても病態が改善しないとき肝移植を考慮します。胆道再建手術によっても胆汁流出が認められないときは、肝不全に陥るため、早期肝移植を考慮しなくてはいけません。


先天性代謝異常症

 肝臓で合成される酵素が生まれつき欠損し、生命が脅かされる疾患です。 ウィルソン病、糖原病、遺伝性高チロジン血症、α1−アンチトリプシン欠損症、家族性アミロイド・ポリ・ニューロパチーなど。



バッドキアリー症候群

 肝の静脈が血栓などによって閉塞をきたし、肝が慢性的に鬱血をきたすため肝細胞が壊死してしまいます。終末期に肝硬変となります。移植後の3年生存率はヨーロッパの成績で60%と考えられています。



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  生体肝移植の手術術式

 脳死肝移植は、脳死ドナーの肝臓をそのままレシピエントに移植します。レシピエントが小児の場合は、ドナー肝を分割して移植する場合もあります。

肝移植
生体肝移植の術式

 生体ドナーの肝臓の左部分(肝左葉)か右部分(肝右葉)をレシピエントに移植します。肝左葉は肝全体の30〜40%、肝右葉は肝全体の60〜70%を占めます。



入院期間について

 患者さんは、約2週間の検査入院終了後、自宅待機をしていただきます。手術の約1週間前に再入院していただき、術後は平均40日程度で退院となります。術後の合併症によっては、数ヶ月に及ぶ場合もあります。一方、ドナーの方は、手術の3日前に入院していただき、術後は、約10日〜3週間で退院されます。合併症によっては、それ以上の入院になる場合もあります。
手術後の社会復帰期間は、手術後1ヶ月〜3ヶ月が多く、仕事内容によっても左右します。重労働(重たい物を抱えたりする仕事)は、術後3ヶ月は控えていただきます。



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  ドナーについて



生体肝移植ドナー適応基準(九州大学基準)

次に、生体肝移植のドナーの適応基準を示します。

  1. 原則として3親等以内   
    (親子、兄弟、夫婦、祖父母、孫、曽祖父母、叔父、叔母、甥、姪、曽孫)
    ただし、それ以外の親族に関しては、個々の症例で判断。
  2. 原則として年齢20歳以上65歳以下(60歳以下が望ましい)
    ただし、未成年者に関しては、第三者(インフォード・コンセント委員or精神科神経科医師)により判断能力を有すると認められた場合、親権者の承認があれば可。
  3. ABO式血液型:一致あるいは適合(小児、緊急の場合、あるいは他にドナーがない場合で、家族の了承があれば不適合も考慮)
  4. 全身状態が良好であること
  5. 肝機能正常あるいは、器質的肝疾患のない軽度の異常
  6. HCV抗体陽性に関しては慎重に適応を決定する
  7. 除外条件
    A. HBs抗原陽性、HIV陽性
    B. 高度の脂肪肝


ドナーについて


 生体ドナーの合併症は、全体の10〜20%に起こります。合併症には、手術直後に起こるものから、一定期間を経過してから起こるものがあります。2004年になって、全国的な術後ドナーのアンケートが行われました。(肝移植研究会ドナーアンケートのPDFページへリンクhttp://jlts.umin.ac.jp/donor_survey_full.pdf



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  肝移植の費用



生体肝移植


[保険適応疾患]

 非代償性肝硬変(ウイルス性を含みます)、劇症肝炎、肝癌(最大径5cm単発もしくは最大径3cmで3個以下の腫瘍で遠隔転移と血管侵襲を認めないもの)、胆道閉鎖症、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、アラジール症候群、バッドキアリー症候群、先天性代謝性肝疾患(家族性アミロイドポリニューロパチーを含む)は、保険適応となります。
 九州大学は、保険医療にて生体肝移植を施行できる施設として認定されています。

[保険非適応疾患]
 上記以外の場合、健康保険が適用されない自費診療となります。1,000万円前後かかる場合が多いですが、術後合併症の程度によって前後し、2,000万円以上かかることもあります。



脳死肝移植

 九州大学は、脳死肝移植施設として認定されています。
脳死肝移植は高度先端医療として認められているため、手術費用は自費(約110万円)になりますが、それ以外の入院費・薬剤代などは、保険適応となります。
 また、臓器を摘出するためにかかる諸費用(交通費・材料費など)も患者さんに実費負担していただきます。



海外渡航肝移植

 3,000万円から5,000万円程度かかる場合が多いですが、術前術後を含めた入院期間や、術後合併症の程度によって前後します。



最後に

私たちは、肝不全で亡くなられる患者さんをひとりでも助けたい、との思いでがんばっています。
前原教授の指導の下に、移植グループ10名の医師と移植コーディネーターが肝移植の臨床、移植医療に関する研究に携わり、日夜頑張っています。




肝移植に関するお問い合わせ先

移植グループTEL: 092-642-5469 FAX: 092-642-5482





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食道の病気に対する内視鏡の手術 呼吸器の病気に対する内視鏡の手術
胃の病気に対する内視鏡の手術 血管の病気に対する内視鏡の手術
大腸の病気に対する内視鏡の手術 脾・門脈の病気に対する内視鏡の手術
肝臓の病気に対する内視鏡の手術 スタッフ紹介へ


【患者さんの体に優しい手術】

私たち内視鏡グループは、日々、内視鏡外科手術の手技(患者さんの体に優しい手術とはどんな手術か?例えば、傷の小さい手術など)や手術の体に及ぼす影響(なぜ、体に優しいのか?など)について検討し、新しい内視鏡手術器具の開発や手術方法について研究を行っております。


  食道の病気に対する内視鏡の手術

 食道癌は進行癌で発見されることが多いのですが、 定期的に消化管検査を受けられている方の中には、 早期発見がなされることがあり、こうした早期の癌に対しては内視鏡下粘膜切除治療(EMR)を 行っています。

治療前

治療後

 胸腔鏡を用いた手術を積極的に取り入れ、術野の拡大視効果や創の縮小が得られており、患者さんにとって優しい治療を行うことができるようになりました。

胸腔鏡下腫瘍摘出術
良性の食道腫瘍に対して、胸に小さな穴を開けて胸腔鏡と細い鉗子を入れて腫瘍摘出を行っています。従来の大きく胸を切開して行う手術に比べると術後の痛みがはるかに軽く、日常生活への復帰も速くなりました。

胸腔鏡補助下食道切除再建術
比較的早期の食道癌に対しても胸腔鏡を用いることで、術野が大きく見えて、より小さな切開創で手術を行えるようになってきました。

腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術
高齢者に多い食道裂孔ヘルニア(食道と胃の接合部が、周囲の組織が弱くなることで胸の中にスライドしてヘルニアを起こし、胃液の逆流などのためにひどい胸焼けや嘔吐をきたす病気)に対して、腹腔鏡を用いてヘルニア修復術を行っています。小さな侵襲で手術が済み、食べ物のうっ滞や逆流症状がとれ、優れた治療効果が得られています。


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  胃の病気に対する内視鏡の手術

 病変部の外科的な切除が必要ですが、大きく切除する必要は無く、小さな創で行う縮小手術で十分な場合は、内視鏡や腹腔鏡を用いた内視鏡外科手術が可能です。内視鏡外科手術が適応となる胃病変は、胃粘膜下腫瘍や早期胃癌です。お腹の創が小さくてすむために、術後は快復が速く、入院期間も短くてすみます。

 病変の種類、性格によっていろんな手術方法があります。病変だけを切除する場合や周囲のリンパ節を一緒に取り除く場合、また切除する場所による違い、お腹の中に到達する手段の違い、再建方法の違いなどがあります。以下にその手術方法を簡単に示します。

到達手段の違い
胃をどの程度切除するか、以下のどの到達方法で行うかは限られてきます。以下の方法の違いは術後の傷の大きさや痛みの程度が異なり、腹腔鏡の手術の方が、手術自体の侵襲が少なくすみます。

腹腔鏡下手術───腹腔鏡のみで手術を行います。
腹腔鏡補助下手術─腹腔鏡と術者の手を用いて行います。
開腹下手術────腹部を大きく開いて術者の手を用いて行います。

 

手術の傷の違い(一部の例です)

腹腔鏡下手術/腹腔鏡補助下手術/開腹手術

胃の病変種類、性格による違い
 悪性度の高い病変は周囲のリンパ節を含めて切除しますが、悪性度の低い病変は病変のみを切除するだけでよいのもあります。必要に応じてリンパ節郭清を行います。

胃粘膜切除───胃の内側の粘膜のみを切除します。
胃部分切除───胃の病変のある部分を胃壁全部を切除します。
胃幽門側切除──胃の肛門側を約2/3切除します。
胃全摘出────胃を全部切除します。


内視鏡的粘膜切除(EMR)/腹腔鏡手術


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  大腸の病気に対する内視鏡の手術

 私達は、できるだけ早期に癌を発見し、早いうちに癌を良い方法で治療するよう心がけ、日々手術法の改善、術前術後治療の改善、術前術後管理の改良等を行っています。その結果、治療成績は徐々に向上して参りました。当科では、最先端技術を用いた内視鏡治療を積極的に取り入れ、侵襲をなるべく少なくし、体に与える痛みを軽くして入院期間を短くしています。また、内視鏡手術以外にも術前の放射線照射療法、抗癌剤の多剤併用療法を行っております。

【腹腔鏡補助下大腸切除術】
 従来の大きくお腹を切開する大腸切除術では、腹部に15〜20cmの皮膚切開を加えて手術を行っていましたが、小さな穴をお腹に開けて、細い鉗子(径3〜10mm程度)をお腹の中に入れて手術を行う腹腔鏡補助下大腸切除術を積極的に行っております。一つ一つの傷が小さいため、術後の痛みが少なく、そのため術後の回復が早く、入院期間が短く、美容的にも小さな傷ですみます。


開腹手術創

腹腔鏡補助下手術創


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  肝臓の病気に対する内視鏡の手術

 
腹腔鏡補助下肝切除
近年、腹腔鏡手術が普及し、胆嚢摘出術を中心として各施設で腹腔鏡手術が行われています。この手術の利点として、従来の開腹手術に比べ手術侵襲が少なく、術後の回復が早く、入院期間が短くなるという事が挙げられます。肝臓グループでも、部位的に可能であれば、腹腔鏡を併用して小さな切開にて肝切除を行うようにしています。
【腹腔鏡下肝切除術を施行した症例】
 
切除された標本です。
矢印の部に腫瘍を認めます。
従来の開腹による切除であれば臍部近くまでの切開が必要ですが、腹腔鏡補助下であれば約半分の切開で切除可能でした。


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  呼吸器の病気に対する内視鏡の手術


従来、胸を大きく切開して行っていた呼吸器外科手術にも、胸腔鏡が導入され、疾患によっては同じ手術が小さな傷で行えるようになり、術後の痛みも軽く、入院期間も短くなりました。

健康診断時の胸部レントゲン写真で早期の右肺癌が見つかり、治癒手術を行いました。


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  血管の病気に対する内視鏡の手術


胸腔鏡下胸部交感神経節切除術
胸部交感神経節切除術は上肢の慢性動脈閉塞症による指の潰瘍症例や、多汗症に対して行う手術で、以前は、約10cm位の切開を加えて手術を施行しており、術後の上肢の挙上障害などがみられる事もありました。しかし、近年、内視鏡、胸腔鏡の進歩により、皮膚を大きく切開する事無く、1〜2cmの切開を3〜4カ所に加えるのみで行う胸腔鏡下胸部交感神経節切除術が可能となりました。当科ではこれまでに14例の手術(2001年3月現在)を施行し良好な結果を得ています。この手術は低侵襲で、術後3〜5日で退院可能です。

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  脾・門脈の病気に対する内視鏡の手術


腹腔鏡下脾臓摘出術
【対象となる疾患】

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血などの血液疾患
悪性リンパ腫などの脾腫瘍
脾動脈瘤
門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症

特発性血小板減少性紫斑病 (Idiopathic Tthrombocytopenic Purpura; ITP)

 ITPは、血小板自己抗体という血小板を攻撃する因子を自分がつくり出し、それにより血小板が破壊されて血小板の寿命が短くなり、ひいては血小板の数が減って血が止まりにくくなる病気です。 治療としてはまずステロイドによる内科的治療が第1選択となります。ステロイドでの治療効果が得られない場合は脾臓摘出術の適応です。 当科では腹腔鏡下脾臓摘出術を行っていますが、この治療効果は約8割もあり、きわめて効果的です。


門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進症

 脾機能亢進症の患者さんの脾臓は腫大しカボチャくらいの大きさになることがあります。そのため、血小板数が減少し出血しやすくなったり、そのために肝癌の治療ができなかったり、C型肝炎に対するインターフェロン治療の導入ができないこともあります。このような患者さんに対して腹腔鏡下に手術を行えば、上記のように小さな創で摘出できるのです 。 脾機能亢進症の患者様の手術の場合、写真のような大きな創でないと、手術が難しいことがあります。



   

C型肝炎の患者さまに朗報!
 C型慢性肝炎・肝硬変症に対するインターフェロン療法(IFN療法)は、ウイルスの駆除だけでなく肝硬変症の進展や肝細胞癌の発生の抑制において、重要な治療法です。しかし、脾機能亢進症のために血小板数や白血球数が減少している場合は、IFN療法の導入ができなかったり、途中で治療を中止せざるを得なくなることも起こります。
血液疾患の患者さまだけでなく、C型慢性肝炎・肝硬変症における脾機能亢進症に対しても、腹腔鏡下脾摘術を積極的に導入しており、現在までに117例の患者さまに行っており、これは日本一の症例数です。血小板数や白血球数は、術後長期にわたり正常レベルが維持されていることがわかります。したがって、IFN療法の導入が可能となるわけです。


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