朝日新聞掲載

平成18年2月25日

-寿命と健康習慣-朝食抜き、ゆゆしき問題

九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)
前原 喜彦

 医師の仕事はハードである。「医者の不養生」という言葉もある。医師は自分の健康を過信して寿命が短いのではないかと考える人もいる。医師には、薬物中毒や自殺者も多いというデータもある。一方、医学や健康に関する知識に精通し、一般の人より長生きではないかともいわれている。しかし、過去の報告を見る限り、医師は短命でも長寿でもないというのが事実のようだ。

 寿命の差は職業にその理由を求めるより、個人の生まれながらの遺伝的要因や日々の環境が大きいと考えられる。

 国内の死因の順位は(1)がん(2)心臓病(3)脳血管疾患だが、これら三つの病気は58年からずっと1〜3位を占め、合計すれば全死因の6割になる。そして、その発生には生活習慣が深くかかわっていることから、生活習慣病と呼ばれている。現在、国内において5大生活習慣病(高血圧、糖尿病、心臓病、脳血管疾患、がん)で少なくとも1400万人の患者がいるといわれているが、この生活習慣病をいかに治療、予防するかが長寿への鍵ということになる。

 72年、米国のブレスロー博士は、様々な生活習慣と身体的健康度との関係について調査し、七つの健康習慣が身体の健康と関係していることを明らかにした。これは「ブレスローの七つの健康習慣」として広く知られている。すなわち(1)適正な睡眠時間(2)喫煙をしない(3)適正体重を維持する(4)過度の飲酒をしない(5)定期的に激しいスポーツをする(6)朝食を毎日食べる(7)間食をしない、の七つである。

 これら七つの健康習慣を守っている人ほど病気にかかる割合が低くて寿命が長く、二つ以下しか守っていない人では、30歳を過ぎると既に健康度は平均以下であった。

 七つのうち半数以上を「食習慣」に関するものが占めていることは、注目に値する。1年365日、日々の食生活が生命の維持にどれだけ大切かが理解できると思う。つい最近の新聞によれば、朝食を抜く小学生や若者が増えているそうだが、これはゆゆしき問題である。自分自身のことを考えても、改めないといけないことがたくさんあると思っている。

 現在、日本人の平均寿命は男性が78歳、女性は85歳。日本は世界一の長寿国だ。今後、何らかの病気にかかる人はますます増えていくと思われるが、寝たきりではなくて自分の力で活動し、生きがいのある人生を全うすることが、本当の「実寿命」と言えると思う。皆さん、自分の健康度をチェックしてみては。


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