朝日新聞掲載

平成17年12月3日

-女性医師の役割-性別にあう診療めざす

九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)
前原 喜彦

 最近、女性医師の増加が著しい。日本の医師数は約25万人(02年)。このうち約6分の1が女性医師で、特に20〜30代の若手の増加が目立っている。このことは、取りも直さず、今後の医療現場で女性医師の果たす役割が増すことを意味している。

 ところで、女性医師が増えるとどうなるのか。今まで男性医師が支えてきた過重労働を伴う分野に、マンパワーの不足を生じはしないかという懸念が浮上する。我々の外科には、従来、女性医師の入局は多くない。少し前までは、外科に女性医師が入れば、「男と同じように」働くことが当たり前で、そうでなければ第一線を退くべきだと考えられてきた。何を隠そう、私もそう思っていた一人である。しかし、最近、そうではないのではと感じることがある。

 例えば、乳房にしこりと痛みを感じている患者は、乳がんかもしれないという不安を抱きながら受診するだろう。我々男性は乳房に痛みや張りを感じることは理解はしても、実感としてはわからない。肛門(こうもん)から出血した女性患者も、お尻を見られるのが恥ずかしいという理由で、受診できずにいる。その結果、痔(ぢ)だろうと思っていたら直腸がんが隠れていたこともあった。

 産婦人科に関しても女性医師が診療にあたっている所は人気がある。近年、女性医師による女性専門外来も増えてきているが、単に「同性の医師に診察してもらえる」からということではなく、性別や一人ひとりのライフスタイルも考慮した上で、患者個人にあった診療が求められていることの証である。

 そのような観点は、男性を取り巻く医療でも重要だ。実際、男性更年期外来など男性機能専門外来が登場しているし、女性医師には話しにくい内容である。

 女性が医師としての生涯を継続することは容易ではないし、欧米に比べて日本では、女性医師を取り巻く社会環境は成熟していない。しかし、女性医師が社会の第一線で働き続けることや、あるいは結婚や出産、育児などを通じて、人としての優しさや思いやり、共感できる心が生まれてくるのも事実である。

 女性医師が、今後自らの果たすべき社会的使命の大きさを理解すると共に、われわれ男性医師側も、共に働ける環境づくりへの協力が必要である。本音を言えば、男女を問わず国の多額の税金を使って一人前となった医師である以上、働かせない手はない。


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