朝日新聞掲載

平成17年11月26日

-C型肝炎新治療-内科と外科連携必要

九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)
前原 喜彦

 国内にはC型慢性肝炎の患者が約200万人いると推測され、約7割は徐々に病気が進行し、10〜30年で3〜4割が肝硬変、さらに肝がんに移行する。現在、国内の肝硬変の患者は20〜30万人、肝細胞がんの患者は3万人と言われている。

 肝硬変になると、肝臓が硬くなり、肝臓へ向かう門脈血が流れにくくなる。そして、本来は肝臓に流れるはずの血液が別の血管に流れ込むようになることで、食道静脈瘤(りゅう)を発症する。食道静脈瘤が破裂すると、洗面器1杯分もの大量出血が起きてショック状態となり、命が危機にさらされる。現在、薬害によるC型肝炎問題とも相まって、C型慢性肝炎をはじめとする慢性肝疾患に対する対策が国の重要な課題となっている。

 C型慢性肝炎の有効な治療法として内科的なインターフェロン療法がある。インターフェロンにはC型肝炎ウイルスの駆除だけでなく、肝硬変の進展や肝がんの発生を抑える作用もあり、肝疾患の重要な治療薬と位置づけられている。だが、副作用として血小板や白血球が減少する汎血球減少症が起こる。

 一方、古くなった血球成分を濾過(ろか)して破壊する場所といわれている脾(ひ)臓は、肝臓に門脈血が流れにくい状態の下で、機能が活発化している。これに副作用が加わることで血小板や白血球の減少がさらに進むため、インターフェロン療法の導入が不可能となったり、途中で治療を中止せざるを得なくなったりすることもある。

 このような患者に対してはインターフェロン療法を行う前に脾臓を摘出し、血小板や白血球の値を正常レベルまで回復させれば、インターフェロン療法を行えることがわかってきた。

 そこで、肝臓の機能の悪い患者になるべく手術の負担をかけないよう、当科では腹腔(ふくくう)鏡下に脾臓を摘出する手術を行っている。腹腔鏡下手術では直径1センチぐらいの小さな穴をおなかに四つ開け、かぼちゃの大きさになった脾臓を周囲より剥離(はくり)・切除し、腹腔内で1立方センチの断片に刻んで体外に取り出す。

 脾臓を摘出すると、血小板数や白血球数は年単位の長期にわたり正常レベルが維持されるので、インターフェロン療法の導入が可能となる。腹腔鏡による脾臓摘出術は当科が92年に世界に先駆けて報告した。現在は世界でトップクラスの130例近くを経験し、良好な成績を上げている。

 C型慢性肝炎―肝硬変―肝がんといった一連の病気の診断・治療は、内科医だけでも、外科医だけでも完結することはできない。内科医と外科医の密接な連係が、C型慢性肝炎患者へのより良い治療の提供につながると考えている。


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