朝日新聞掲載

 
平成17年10月22日

-医療の質向上-クリティカルパス活用

九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)
前原 喜彦

 医療を取り巻く社会環境は大きく変化しているが、我々が患者に提供していく医療の質は絶対に落としてはならないし、少なくとも一定水準以上を維持していくことが求められている。我々の都合で患者に不利益があってはならない。

 九州大学病院は2年前に全国の大学病院に先駆け、わかりやすい医療、良質な医療を目指し、院内の職員の総意に基づく「疾病の計画的診療指針」とも言うべき「クリティカルパス」の作成に取りかかった。検査から入院、治療、退院、さらには外来のフォローに至るまでの過程を、計画を立てて効率よく行うものである。

 クリティカルパスの発想は、1950年代の米国軍事産業での工程管理に由来する。経費削減と工期短縮を求める姿勢を医療にもあてはめ、「最小の人手で一定水準の医療サービスを提供し、短期間に入院を終えてもらう」という考え方だ。

 今日のクリティカルパスの基本形とも言うべき指針は、85年にボストンの看護師、カレン・サンダーが発表した。日本では90年代後半から普及し始め、現在は医療改革のキーワードの一つとなっている。

 クリティカルパスの最終目的は、医療の標準化や患者サービスの改善、安全の確保、地域医療連携の推進、病院経営の改善を図ることによって、患者に提供する医療の質の向上を目指すということである。病院全体のパス大会で多くの職員の目を通って評価され、公認パスとして認められることで、ひとりよがりではなく客観性を持った医療の遂行が可能となる。

 第1陣として糖尿病(教育入院)、腹腔(ふくくう)鏡下胆のう摘出術、脳梗塞(こうそく)。第2陣として狭心症・慢性虚血性心疾患、前立腺良性腫瘍(しゅよう)、乳房悪性腫瘍、白内障手術、卵巣・子宮付属器の悪性腫瘍のパスが公認を受け、運用がスタートした。今後も数多くのパスが作成され、臨床の現場で活用されていく予定である。

 九州大学病院におけるクリティカルパスの実践が病める方々への福音となることを祈っている。


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