粘膜内に癌がとどまるStageIA の癌では、内視鏡(口から入れるカメラ)による治療がまず試みられます。ただし癌の種類によっては、この内視鏡治療が選択できない例外もあります。粘膜下層まで達した StageIA の癌から StageIIIC までの胃癌には一般的に手術が選択されます。手術には様々な方法があり、癌の進行度や部位によって方法が選択されます。

1.胃の手術法

1) 手術のアプローチによる分類

腹腔鏡手術: 内視鏡手術や鏡視下手術と呼ばれることもありますが、胃カメラによる治療と区別するため、腹腔鏡手術と呼ばれます。腹部にカメラと細長い鉗子を挿入する孔をあけて手術をする方法です。切除した胃を取り出すためにお腹をすこし切開する必要がありますが、最小限の傷で手術が可能です。最近では、胃を取り出す作業以外のすべての操作を腹腔鏡下で行う完全鏡視下手術が主流となってきました。回復が早く、傷が目立たないため、現在では胃癌手術の半数以上がこの完全鏡視下手術で行われます。

完全鏡視下手術による術創です。数個の小さな傷のみで手術を行っています。

開腹手術: 腹腔鏡手術に対して、通常通りお腹を切開して行う手術法です。お腹の手術を何度も行っている方や、癌が非常に進行している場合は開腹手術が行われます。
開腹手術による術創です。

2) 胃の切除範囲による分類

幽門側胃切除術  
胃の入り口側を噴門側、胃の出口側は幽門側と呼ばれます。したがって出口側の胃を切除する方法が幽門側胃切除術です。胃の手術のなかでもっとも頻度が高い方法です。腹腔鏡でも開腹でも行われます。胃が部分的にのこりますが、胃の主な機能である食物の貯留、消化作用はほとんどなくなります。そのかわり、ゆっくりよく噛んで食べることで、その作用を代用することが必要です。手術後数ヶ月もすると術前と同等の食事の量となることがほとんどです。

噴門側胃切除術  
胃の入り口側を切除する手術方法です。胃の入り口に非常に近い部位にある早期癌のみが対象になります。胃の入り口を切除すると、胃の内容物が逆流するため、手術には特別な工夫が必要です。幽門側胃切除に比べると頻度は極端に少なくなります。腹腔鏡でも開腹でも行われます。

胃全摘術  
胃をすべて切除して食道と空腸(小腸の一部)をつなぐ方法です。癌が胃の入り口に近い場合や、癌が大きい場合は胃全摘術が選択されることがあります。腹腔鏡でも開腹でも行われます。この方法では胃の機能が完全に失われるために、幽門側胃切除の場合よりさらによく噛んで食事をする事が重要となります。全摘したからと言って、障害が残るわけではないので、日常生活は通常通り行なえます。


2.胃を手術した後の経過

1) 胃癌の病期と予後

 このグラフは胃癌の進行程度をあらわすstage 別に生存率(100人中の生存者数)を示しています。stage が上がるにつれて胃癌の進行程度も進んでいます。このグラフからも早く胃癌をみつければほとんどの人が生存できることがわかります。


2) 胃癌の予後と時代推移


 手術を行った年代別の生存曲線です。60、70年代と比べると、最近の方が生存率が良くなってきています。これは、技術の向上と共に胃癌が早期に見つかるようになったためなのです。


3.胃癌の再発

 下の図は胃癌の再発率を癌の胃壁への深達度別に示しています。胃癌は最初は胃の最も内側つまり胃内腔側にある粘膜層に出現すると考えられています。進行するにつれて周囲に広がっていき、また、胃壁深くに潜っていきます。そこで、胃壁への癌の潜り具合が進行程度を示す一つの方法として用いられており、深達度という表現をしています。 再発率のグラフではこの深達度が深くなればなるほど再発率も多くなっていくのがよくわかります。

 胃癌が再発してくる場合、どのような形式があるのでしょうか。いろんな臓器に癌は出現してきますが、その臓器によって性格は異なってきます。 それに伴い、再発形式も異なります。胃癌の場合、下図のように血行性転移や腹膜播種による再発がほとんどです。

1) 血行性転移  
  血液中に癌細胞が進入し血流にのっていろいろな場所に運ばれ、そこで癌として再発してしまう転移です。肝臓や肺、骨髄などに転移します。

2) 腹膜播種  
  胃癌が進行し胃の外側の壁を破った状態で腹腔内に癌細胞がバラバラと広がってしまい、腹腔内に多数、広範囲に癌を形成してしまう再発の形式です。

 
 深達度は、上図のものと同じですので、参照してください。 深達度が深くなるに連れて腹膜播種での再発率が多くなっています 。