1) 治療の原則
食道癌の治療は内視鏡による治療、手術、放射線や抗がん剤による治療にわかれます。内視鏡による治療は最近、行われるようになった治療で早期癌のみに行えます。手術は切除可能な患者、つまり、癌がとりきれる、手術に耐えられる、手術を希望する、この3つの条件をすべて満たした人のみに行われます。これらの治療ができるのは食道癌の患者のだいたい6割くらいで、残りの患者には放射線や化学療法がおこなわれます。また、手術前に癌を小さくする、また、手術で残った癌を治療するという目的で放射線や化学療法が行われることもあります。

食道がんに対する治療法


2) 食道内視鏡による治療
 内視鏡的粘膜切除術は軽い麻酔で行え、入院も数日で可能ですが、早期癌のみにしか行えません。この意味でも早期発見が重要です。私たちの施設でも内視鏡治療の可能な方には積極的に内視鏡治療を行っています。

内視鏡的粘膜切除術


3) 手術
 手術は食道を大部分切除し、食道の代わりとなる管をつくります。これを再建といいますが、通常、胃を用います。まず、右の胸をあけ、食道とリンパ節をとります、つぎに、お腹をあけ、胃を細くして、胸の中あるいは胸の前の方でつり上げ、残った食道とつなぎます。この手術は7時間から10時間くらいかかります。通常の食道癌の手術では喉頭はとらないので、術後に声は失いません。
 私たちの科ではこれまでに1000例以上の食道手術を経験しています。この経験をもとに手術方法や術後管理の改善し、安全に手術を行えるようになりました。
 手術により45% 以上の方の、根治が期待できます。術後の成績は癌の進行度(Stage)によります。特に、早期癌では、90%以上の根治が望めます。

Stage別の5年生存率


4) 放射線、化学療法
 放射線や化学療法は手術の行えない患者に行います。食道癌は胃癌や大腸癌よりもこれらの治療が効くことが多く、写真のように10cmもある癌が、きれいに消えることもあります。ただし、たいていの場合はこのようにきれいに消えても、半年から一年後にまた癌がでてくることが多く、進行食道癌の治療は原則として手術といえます。
 私たちの科では、手術前に放射線や抗癌剤で腫瘍を小さくし、安全に切除できる大きさにして手術をおこなう術前放射線・化学療法や手術後に残った癌細胞に対しておこなう術後放射線・化学療法も積極的に行っています。

放射線・化学治療の奏功例


5)私たちのめざす食道癌の治療
 食道癌の治療では癌をなおすという意味で、手術では頸部も含めた徹底的なリンパ節郭清が行われていますが、侵襲も大きくなります。したがって、早期癌に対しては内視鏡治療が行ったり、最近では小さな傷で食道を切除する胸腔鏡手術が導入しています。また、少量の抗癌剤を連日投与することに副作用を軽減し、投与量をあげ効果を期待するという方法が主流となってきました。私たちは、「癌を治す」ことと「患者にやさしい」治療、両方を目指した治療を心がけています。

根治性と低侵襲をめざして