重症虚血肢〜開始いたしました


重症虚血肢に対する血管新生遺伝子療法の
臨床試験を開始しました

当科では、腹部大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症などの血管疾患に関する診療を、診断から治療(薬物・血管内治療・手術)まで一貫して行っています。
近年、動脈硬化が原因となる閉塞性動脈硬化症症例が増加しておりますが、これに伴い安静時疼痛や潰瘍・壊疽を訴えるいわゆる重症虚血肢の症例も多くなってきております。
重症虚血肢に対しては、バイパスなどの血行再建術が最も有効な治療法です。重症虚血肢症例の血管病変は、多発性病変や下腿まで至る末梢型の病変が多く、当科では、血管内治療(ステント留置)を併用したバイパス手術や、自家静脈グラフトを用いた足関節レベルあるいはその末梢へのバイパスを積極的に行っています。
しかしながら、病変が更に広範で血行再建の適応とはならない症例や、他臓器の動脈硬化進行のために全身状態が不良で耐術が困難な症例では、やむを得ず肢切断に至ることもあります。また、肢切断症例の生命予後は不良と言われております。

このような重症虚血肢に対する新しい治療法として、細胞移植や血管新生遺伝子導入による血管新生療法が注目されております。
我々は、独自に開発した組換えウイルスベクター(SeV)を用いた動物実験において、
1) 高い遺伝子発現を得られること、
2) 海外で使用されている血管内皮細胞増殖因子は安全域が狭いが、
    線維芽細胞増殖因子(FGF-2)は明確な副作用は認めず安全域が広いこと、
3) FGF-2は、動物の重症虚血肢モデルにおいて高い効果を認めること、
4) 治療効果を示すFGF-2の発現レベルでは副作用がほとんど認められないこと、
    を見出しました。
これをもとに、『血管新生因子(線維芽細胞増殖因子:FGF-2)遺伝子搭載非伝播型組換えセンダイウイルスベクターによる慢性重症虚血肢(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)に対する血管新生遺伝子臨床研究』を計画し、この度、厚生労働省の承認を得ることができました。
対象となる症例は、閉塞性動脈硬化症やバージャー病により安静時痛や潰瘍・壊疽を来した重症虚血肢の症例で、40歳以上の患者さんです。
この臨床試験では、世界初の国産ウイルスベクターを使用するために、安全性の検定を主眼とした最大用量までの4段階の用量漸増式の第 I および II a相臨床試験です。
適応と考えられる症例がありましたら、是非、当科へご紹介頂きたいと存じます。また、このページをご覧になっている患者さんで、夜間に足が痛くて眠れない、なかなか治らない足の潰瘍があるなどの症状でお困りの方は、一度、当科へご相談下さい。



血管外科担当
助教
岡崎 仁(jokazaki@surg2.med.kyushu-u.ac.jp
(日本外科学会認定医・専門医、
 心臓血管外科専門医)
 
 
臨床助教
郡谷 篤史(atusi@surg2.med.kyushu-u.ac.jp
(日本外科学会認定医・専門医、
 ステントグラフト実施基準管理委員会
 腹部ステントグラフト指導医)