腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

 腹部大動脈瘤の治療は、外科治療が中心となります。外科治療には、前述した「人工血管置換術」か、新しい血管内治療である「ステントグラフト手術」があります。「人工血管置換術」は、現在安全に行われるようになってきましたが、動脈硬化症に起因した本疾患では、脳、心、肺、肝、腎など重篤な合併症を有する症例や高齢者において、手術リスクが非常に高くなり、低侵襲な治療法が望ましいのはいうまでもありません。「ステントグラフト手術」は、1991年、Parodiらによって最初の症例が報告されて以来、侵襲の少ない治療法として欧米を中心に急速に広まっています。日本でも、2007年4月から、市販のデバイスを使った「ステントグラフト手術」が行えるようになりました。
当科でも、1998年5月より、自作のデバイスを使った「ステントグラフト手術」を行ってきましたが、2007年9月から市販のデバイスを使った手術を開始し、2008年11月現在、例行っています。
「ステントグラフト手術」は、足の動脈(大腿動脈)からステント付きの人工血管を大動脈の中に挿入し、レントゲン装置を用いて動脈瘤の位置に留置する術式です。足の付け根に小さな切開(5〜7cm)を入れるだけで治療ができるため、術後の痛みも少なく、患者さんの身体の負担は開腹手術に比べて極めて低いという利点があります。ご高齢の方や、ハイリスクの方にも受けやすい治療です。
但し、全ての方にこの治療方法が適応されるわけではなく、動脈瘤の形や場所によっては、開腹手術が適している場合もあります。詳細は、当科専門医までお尋ね下さい。

図4 【ステントグラフト挿入前】

図5 【ステントグラフト挿入後】

図6 【ステントグラフトアニメーション】

 

閉塞性疾患に対する経皮的血管拡張術(PTA)
及びステント挿入術

 骨盤の腸骨動脈領域における血管が狭窄している患者さんに対しては、手術をすることなしに、その狭窄部位に対しては、カテーテルを用いて、風船(バルーン)による拡張術と金属ステントを用い狭窄部位を拡張する治療を行っています。症例によっては、完全閉塞していても再開通可能です。
 局所麻酔で施行でき、翌日より歩行可能です。図7は、ステント挿入前とステント挿入後の血管造影写真で、ステント挿入後良好な血流が認められて、症状も消失しました。

図7 【閉塞性動脈硬化症に対するステント治療】

 ステント挿入前とステント挿入後の血管造影写真で、ステント挿入後良好な血流が認められています。

胸腔鏡下胸部交感神経節切除術

 胸部交感神経節切除術は上肢の慢性動脈閉塞症による指の潰瘍症例や、多汗症に対して行う手術で、以前は、約10cm位の切開を加えて手術を施行しており、術後の上肢の挙上障害などがみられる事もありました。しかし、近年、内視鏡、胸腔鏡の進歩により、皮膚を大きく切開する事無く、1−2cmの切開を3−4カ所に加えるのみで行う胸腔鏡下胸部交感神経節切除術が可能となりました。当科ではこれまでに14例の手術(2001年3月現在)を施行し良好な結果を得ています。この手術は低侵襲で、術後3−5日で退院可能です。