歩くと足が痛くなり、一度休まないと歩けない(間欠性跛行)という症状のなかに、体の動脈が閉塞する(つまる)病気があります。

 動脈は、心臓から送り出された血液を臓器や手足の筋肉へ運ぶ血管です。動脈が狭くなることを狭窄(きょうさく)、つまってしまうことを閉塞(へいそく)といいますが、動脈硬化で手足(上肢、下肢)の動脈に狭窄や閉塞が起こる血管の病気を閉塞性動脈硬化症といいます。高齢化社会、食生活の欧米化や車社会の発達などによる生活様式の変化などの影響で、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患が増えています。慢性的に四肢(特に下肢)の血管が狭くなったり(狭窄)、または閉塞(つまる)することで血流が悪くなり、その為に四肢の循環障害が起こる病気です。

i) 症状:その重症度で4段階にわかれています。

1度:足が冷たい (冷感) しびれる
2度:間歇性跛行 (少し歩くと足が 痛くなる。
 あるいはだるくなり休まなくてはいけない)
3度:安静時疼痛 (じっとしていても足が痛い )
4度:潰瘍、壊死 (足や手の指などが腐れる)

ii) 原因:
動脈硬化による閉塞性動脈硬化症がほとんどですが、原因不明の血栓性閉塞性動脈炎 (ビュルガー病)などもあります。

■閉塞性動脈硬化症:

 主に動脈硬化が原因となり動脈が閉塞する病気です。以前は日本人には少ない病気でしたが、食生活の欧米化に伴い、最近急速に患者さんの数が 増えてきており、現在、慢性動脈閉塞症の 80%以上がこの病気です。体の大きな血管が閉塞する事が多く外科的手術が可能な事が多い。

■血栓性閉塞性動脈炎(ビュルガー病):

 原因不明の血管炎により動脈 が閉塞する疾患です。閉塞性動脈硬化症と違い、最近この病気は減ってきていますが、体の手や足先の小さな血管が狭くなることが多いため、外科的バイパス術が困難な事もあり、治療が難しい疾患です。厚生省の定める難治性疾患に指定されています。

iii) 治療:
まず、生活指導では禁煙が大事です。タバコを、今すぐやめて下さい。また、運動療法も重要です。痛みのために歩けなくなる歩行距離や時間の約八割を歩くようにして、数分間休息を取るようにします。運動療法を繰り返すことにより、側副血行路が発達し、下肢の血流が改善されます。そのほか、日常生活で気をつけることは、手足の保温、長時間の正座やしゃがみ込んだ状態をさける、深爪などの外傷を避け、足の皮膚を清潔に保つなどです。また、食生活については、コレステロールや脂肪分の多い食事を控え、肥満にならないよう標準体重を維持することを心がけましょう。

 治療としては薬物療法と外科治療があります。症状が1度、または度でも長く歩ける方は薬物療法で症状がどのように変化するのか外来で経過を観察します。
 その後、症状が改善しない方、あるいは悪くなる場合は外科的治療 を考慮します。特に症状が3度、4度の患者さん、また2度で歩ける距離が短い患者さんについては、血 管造影、全身状態の精密検査の結果、外科治療を考慮します。図3に 腹部大動脈、腸骨動脈部位の閉塞性疾患に対する血行再建術(バイパ ス術)の成績を示していますが、特に解剖学的バイパス術(腹部大動脈、腸骨動脈−大腿動脈バイパス術)は開存率が高く、患者さんにも 大変喜ばれる手術であります。症状が3度、4度の患者さんは放置すると肢切断に至る可能性が高く、血行再建術が必要ですが、下肢の動脈が広い範囲で閉塞していることがあります。このような患者さんでも、自家静脈グラフトを用いた積極的な血行再建術を行っており、足関節レベルの小さな動脈へもバイパス可能です。
 また、最近では狭窄部位や閉塞していても距離が短い場合にはステン ト治療を行っています。ステント治療単独の治療も行っておりますが、多発性の病変に対しては、血行再建術と併用しての治療も行っております。ステント治療につきましては"最先端の治療" のところで詳しく説明します。
 血行再建術いわゆるバイパス術がむずかしい患者さんに対しては、末 梢の血管を拡張させる目的で胸やお腹の中の神経節をとる手術(胸部 交感神経節切除術、腹部交感神経節切除術)があり、歩ける距離が延 びたり、手、足の潰瘍が治癒したり、症状の改善が期待できることがあります。
 

図3 【閉塞性動脈硬化症の種手術成績】

 当科における1984 年1月から1998 年6月までの腹部大動脈や腸骨動脈に閉塞がみられる患者さんへのバイパス手術(血行再建術)の成績(開存率)を示しています。解剖学的血流の流れに沿ったバイパス術(解剖学的バイパス術)では、5年開存率が約95%と良好な成績です。また、患者さんによっては、解剖学的血流の流れに沿ってないバイパス術(非解剖学的バイパス術)を選択する場合もありますが、そのような場合でも77%と比較的良好な開存率が得られ、腹部大動脈や腸骨動脈領域に閉塞がみられる患者さんは外科的治療が非常に有効です。

術後のフォローアップ

 手術が安全に成功したあとでも外来でのフォローアップが大事です。頻度は低いのですが、バイパス血管が閉塞して、また歩けなくなったり、人工血管や自家静脈などバイパス手術を行った吻合部(繋いだところ)が動脈瘤みたいにふくれたりする事があるので、注意深い観察と検査が必要です。その為に、血管外科外来では手術後の患者さんに定期的に血流検査を行うなど、きめの細かいフォローをすることにより、このような術後合併症の早期発見に勤めています。
 ご協力よろしくお願い致します。