動脈瘤とは?

 動脈の壁がもろくなって瘤状に拡張する病気です。その部位により、腹部大動脈瘤、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、末梢動脈瘤などがありますが、腹部大動脈瘤の患者さんが最も多く、当科で治療する動脈瘤症例のほとんどを占めています。動脈瘤の多くは、動脈硬化が原因といわれています。
 本来の大動脈の大きさは腹部で約1.5から2.0cmほどですが、正常径の1.5倍(3cm)以上の限局性の拡張を腹部大動脈瘤と呼びます。動脈瘤が大きくなってくると、破裂が起こる可能性が高くなります。1年あたりの破裂率は、瘤径4.0cm未満で0%、4〜5cmで0.5〜5%、5〜6cmで3〜15%、6〜7cmで10〜20%、7〜8cmで20〜40%、8cm以上で30〜50%見込まれます。いったん破裂すると、腹痛や出血性ショックが出現し、直ちに手術が行われなければ命を落とします。手術を行う前に亡くなられる患者さんが約半数、また、緊急手術を行ったとしても、出血のため心臓、脳、腎臓その他の重要臓器の血行障害を起こしているので、死亡率は高くなります。腹部大動脈破裂に対する緊急手術を行った場合、その死亡率は約50%と極めて恐ろしい病気です。
 一方、破裂する前に、心臓、肺、肝臓、腎臓などの全身状態を十分に検査して行う手術、つまり予防(待機的)手術は安全におこなわれるようになっており、その死亡率は、いろいろな施設からの成績を平均しますと一般的に約3%位です。当科では、最近20年間(1985年から2004年)に542例の腹部大動脈瘤に対する手術を施行しており、その手術死亡率は1.1%と、良好な手術成績であります。従って、破裂する前に行う待機的手術が望ましい病気であります。

症状

ほとんどの場合が無症状で、超音波検査やCT検査で偶然発見される患者さんが多く見られます。また、多くの場合、腹部にコブのような拍動性の腫瘤が触知されることがあります。しかしながら、いったん破裂すると、腹痛や出血性ショックが出現します。また、破裂する前の前兆として、患者さんが腹痛や腰痛を自覚することもあります。

検査

 外来を受診して頂くと、超音波、CT等の検査をまず行います。また、狭心症・心筋梗塞など冠動脈疾患の検査も含め、全身状態の評価もできるだけ外来検査で行っております。全身状態(手術の危険度)や動脈瘤の大きさ・形状などを参考に、治療方針を決定します。血管造影など特殊な検査が必要な場合は、入院して頂いて検査を行うこともあります。

図1 【CT像と血管造影】

 大動脈瘤のCT像及び血管造影ですが、CT像にて矢印の示すように大動脈の径の拡大を認めます。また、血管造影では矢印の示すように、大動脈の突出を認めます。

治療

 治療方法は従来の外科的手術と最先端の治療法としてステントグラフト挿入術があります。
 従来の外科的手術は、拡張した大動脈瘤を取り除き、人工血管で置換します。ほとんどの場合、開腹して手術を行いますが、開腹歴があり高度の癒着が予想される場合は、腹膜を開けないで大動脈に到達する方法(腹膜外アプローチ)を行うなどしています。前述したように極めて安全に行われており、入院期間は2〜3週間です。また図2に示しておりますが、腹部大動脈症例で手術をした症例(手術群)としていない症例(非手術群)での生存率を比較すると、手術群の生存率が有意に高い事がわかります。また非手術群の死因として瘤破裂に起因するものが多いため、待機的手術が望ましいと思われます。
 ステントグラフト挿入術につきましては、"最先端の治療"のところで詳しく説明します。

図2 【腹部大動脈瘤術後生存率】

 当科において1979年1月から1995年12月までに腹部大動脈瘤に対し手術を施行した332例の手術症例と、同時期に手術を施行しなかった44例の3年、5年生存率を比較検討したところ、図のように手術を行わなかった場合、生存率が不良で、動脈瘤手術における有効性が認められました(Komori K et al. Surgery 1999; 125: 545-52)。